神奈川建工外観都筑区中川中央1丁目にある神奈川日本建工(左)を、レポーター3人で訪問してきた。地下鉄「センター北駅」から歩いて3分ほどの所にある。

この会社は、1996(平成8)年に設立したばかりの12年しか経っていないゼネコンである。失礼ながら規模も小さい。しかし、神奈川日本建工が関係している福祉施設がたくさんあることに、福祉関係の取材をしている時に気がついた。

滝沢さんと御代さん経済新聞や経済誌ばかりでなく、一般紙やテレビ・ラジオなどのメディアにも、たびたび登場している。それが今回の訪問につながった。

高齢者と女性の戦力を活かしている会社と聞いていたが、取材に応じてくださったのも女性2人。総務部の滝沢さん、営業サポート部の御代さん(右)が終始にこやかに対応してくださった。

「社長は思いつくとすぐ実行に移すので、私たち社員は大変なんですよ」とお2人は口をそろえる。でも言葉とは裏腹に、実に楽しげな様子だった。


    社会福祉施設・高齢者介護施設

設立の頃は、一般的なアパート・マンション・ビルの建築が主流だったが、現在の主業務は、首都圏を中心とした社会福祉施設・高齢者介護施設の設計、施工管理である。

車椅子利用あるとき、社会福祉法人からアパートの1階部分を借りたいとの要望があった。しかし「そういう方が入居すると他の入居者が嫌がるので」と、オーナーが尻込みをした。

社会福祉施設に関わりだしたのは、こんな背景があったからだ。幸い、都筑区には調整区域が多い。調整区域にも社会福祉施設の建築が可能なことがわかり、知的障がい者・精神障がい者・認知症高齢者の施設を手がけるようになった。

社会福祉施設を手がける会社だけあり、「車椅子用トイレ店内にございます。ご利用ください」や「こども110番のいえ」の表示があった(左)。通りがかりの車椅子の方が、何人も利用しているという話だ。内部には、介助犬育成募金箱も置いてあった。


  20〜30年の長期賃貸契約

「わが社の業務の特徴は、法人斡旋による土地活用をしていることです」と滝沢さんと御代さんが話し出した。「法人斡旋って、どういう事ですか?」の質問に丁寧に答えてくれた。

「地主が提供した土地に建築する場合、建築を始める前に建物全部を借りてくれる法人や企業を見つけます」。「土地のオーナーと法人の間には、20〜30年という長い賃貸契約を公正証書にて結びます」。

双方のネットワーク通例は、アパートやマンションの完成後に入居者を探す。しかし入居者が見つからない場合もある。「それなら建てる前に入居者を見つけようではないか」という画期的なシステムが、法人斡旋による土地活用だ。

このシステムは、賃貸アパートを建てたけれど空き室や家賃の値下がりに悩む土地のオーナーには、大好評。特に、社会福祉施設・企業倉庫・空手道場などのスポーツ施設は、住居に比べ交通の便を第1に考えなくてもすむので、この制度を使う場合が多い。

法人斡旋による土地活用を実現するためには、情報は多ければ多いほどいい。そのために、社会福祉法人・企業・医療法人・NPO法人・病院・診療所・教育施設・公益法人など約103,000もの法人と双方向のネットワークを構築している。(左は神奈川日本建工のパンフレット)。



   区内の施設

神奈川日本建工がたずさわった社会福祉施設は、区内に現在11ヵ所ある。横浜市を中心に全体で40数施設あるが、4分の1は都筑区にある。開設が早い順に11ヵ所を下にまとめてみた。天井の高さや採光にも工夫が見られ、明るい雰囲気の造りになっている。

(d)の「レセリアつづき」と(h)の「さくらんぼ」の詳細は、交流ステーションがお手伝いした「てつなぎつづき」のサイトにも載っている。

(a)(b)(c)(d)(i)は同愛会、(e)(g)は藍和、(f)(j)(k)は都筑ハーベストの会、(h)は真桜会が、それぞれ運営している。 グリーンスペース 響き びえんと
(a)知的障がい者グループホーム「グリーンスペース」の外観(牛久保東) (b)障がい者地域作業所「響き」の外観(中川町 (c)知的障がい者グループホーム「びえんと」の外観(中川)
レセリアつづき クレール横浜つづき テラ都筑 クレール横浜みなみ
(d)障がい者地域作業所「レセリアつづき」の作業場(牛久保西) (e)認知症高齢者グループホーム「クレール横浜つづきの内部(茅ヶ崎東)
(f)精神障がい者グループホーム「テラ都筑」の外観(茅ヶ崎東) (g)デイサービス「クレール横浜みなみ」の洗面所(茅ヶ崎東)
さくらんぼ こころ野 ビオ茅ヶ崎
(h)地域活動支援センターさくらんぼ」の外観(東山田町) (i)知的障がい者グループホーム「たんぽぽ」の外観(牛久保西) (j)精神障がい者生活支援センター「こころ野」のキッチン(茅ヶ崎東) (k)精神障がい者グループホーム「ビオ茅ヶ崎」のダイニングルーム(茅ヶ崎東)


     営業の即戦力は高齢者  

神奈川日本建工は、マスコミの取材が実に多い会社だ。日経・産経・生産性・朝日・神奈川・ジャパンタイムスなどの新聞、実業界・住宅新報・戦略経営者などの雑誌。テレビでもNHKの「土曜フォーラム」・フジテレビの「とくダネ」・TV神奈川の「ニッポン早わかり」で放映された。

パートナーシップ制度の記事これらマスコミ取材のほとんどは、パートナーシップ制度(高齢者を雇用して営業の第一線で働いてもらう制度)についてである。新聞や雑誌の見出しを、いくつか拾ってみる。

「企業OB 営業の即戦力に」「建築営業未経験者に業務委託」「シニア営業マン登用で高齢者・福祉施設建築受注伸長」「高齢者を活用し急成長」「高齢者のプロ意識が会社を支える」などなど、高齢者が会社を変えたという記事が多い。(左写真は、生産性新聞・日本経済新聞・実業界の見出しを組み合わせたもの)

中小企業では、質の高い若者を採用することは不可能に近い。「やる気があって力のある定年退職者がたくさんいるはず。こういう人を採用したらいいのではないか」の小西社長のアイディアで、営業職に高齢者の採用を始めた。結果的には、社長の直感に狂いはなく、2003年のパートナーシップ制度導入後、営業成績は飛躍的に伸びた。

一定の報酬以外は、成功報酬によるが、現役時代を上回る収入を得ている人もいる。現在のトップセールスは72歳の方。70歳前後の高齢者の成績が非常に良いそうだ。営業マンも高齢者、お客さんも高齢者の地主が多い。高額な買い物をするには、買う人と売る人との信頼関係が必要だ。こんなとき会社や人生での豊富な経験がモノを言うようだ。面白いことに、建築関係の仕事をしていた人ではなく、まったく別の業界にいた人が採用される場合が多い。

しかし、高齢者なら誰でもいいわけではない。たくさんの応募者の中から、試験と面接で数名採用されるが、辞めていく人も多い。当たり前のことだが、「楽してお金は稼げない」ということだろう。

最近、高齢者が邪魔者扱いされ、切り捨てられる風潮にある。こんなご時世に、高齢者の意欲を最大限に活用してくれる会社が都筑区にあるのは、非常に嬉しい。小西社長は、テレビの取材で「営業は、年齢の蓄積が役に立つ」と語っていた。蘊蓄のある言葉が心に残った。
(2008年5月訪問 HARUKO記)

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