地域新聞を発行しているタウンニュース社横浜北支社を、ふたりで訪問してきた。横浜北支社(左)は、青葉区荏田西2丁目、田園都市線「江田駅」の真ん前にある。本社も同じビルに入っているので、ここだけで約60名が働いている。

訪問した10時には、「タウンニュース」と車体に書いてある車(右)が、広い駐車場を埋め尽くしていた。記者1人に1台ずつあてがわれているので、全社で150台もの車があるそうだ。

訪問を終えて帰る頃には、車はほとんど出払っていた。駐車場が空いているのは、記者達が情報集めに走り回っている証でもある。

横浜北支社は、都筑区・港北区・緑区・青葉区の4地区を担当している。私たちは都筑区版の佐藤編集長から話を聞いた。長時間の取材にもかかわらず、快活かつ爽やかに応じてくださった。


神奈川県全域と町田市で221万部を発行

タウンニュースの歴史は、1977年の秦野版発行にさかのぼる。1996年には港北ニュータウン版を創刊。都筑区版は1997年から始まった。今では、神奈川県全域44地区と町田市の45地区で、合計221万部を毎週発行している。地域新聞としては、非常に規模が大きい。

都筑区版の部数は38,070。「半端な数ですね」の問いに「新聞購読数や世帯数などを加味して細かな計算をした上で決定しています」という答えが佐藤さん(左)から返ってきた。

朝日・読売・毎日の3大新聞に折り込む他、地区センターなど区内37ヵ所に置いている。ポスティングなどと違い一般紙に折り込むことで、多くの読者に定期的に読まれることが強みだ。

去年、読者アンケートをしたところ、「毎号読んでいる」という回答が85%。切り取って保存する人が60%。「家族みんなで読んでいる」は65%。主婦ばかりでなく、男性や子どもなど幅広い世代に支えられている。500万人以上が目を通していることがわかった。


 広告もニュースである

一般紙に比べ広告を多く載せることで、タウンニュースを無料で配布出来る。だからといって、広告ならなんでも良いわけではない。読者のニーズに合った広告や情報を掲載している。

街の出来事だけがニュースではない、広告もニュースであるというスタンスで、地域に密着したアドコミュニケーション(アドコミ)の確立を目指している。「広告をわかりやすく面白く読者に伝えたいんです。読者とクライアントを繋ぐのがタウンニュース社だと思ってください」と編集長は熱く語った。ちなみにアドコミはタウンニュース社の造語で、商標登録している。

一般的に、広告には「誇大広告」のイメージがあり、消費者に信頼されているとは言い難い。しかしここの広告は、記者が取材して記事にしている。医院・整体・エステの体験レポートもある。政治家へのインタビューが、政治家個人の宣伝になる場合もある。広告を文章にしていることが特徴だ。

「どんな広告が多いのですか」と聞いてみた。「1位は小売り物販です。地域商店のブティック・レストラン・ケーキ屋など。2位は医療、3位は美容。4位が塾や政治関係です。広告が多いのは読者のニーズもあるからなんです。広告から情報を得ている人が多いんですよ」と、あくまで読者の要望に応えようとする姿勢だった。


地域に密着した情報

しかし、広告だけなら読者は読もうとしない。広告以外の地域情報も、読者を惹きつけていると思う。トップ記事2つ(外面に2ヵ所)は、都筑区に関係あるニュースを取り上げている。大新聞の地方版は、都筑区のニュースはないに等しいが、タウンニュース都筑区版は、トップ記事以外の小さな情報も満載だ。□□さんのお宅でホタルが飛んだ、○○小学校の××君が表彰された、△△幼稚園で芋掘りをした・・などなど、微笑ましいニュースが多い。

報道を通して、地域のオピニオンリーダーの役目も果たしている。情報発信をする社会的責任を、入社時に徹底して教育されるそうだ。「オカミと喧嘩するぐらいの意気込みで取材すれば、市民のためになる」と。

アドコミと地域ニュースの双方を持っていることがタウンニュースの商品価値と言えます」と、これまた編集長の弁である。

人気記事は、「人物風土記」「トップ記事」「こんにちは赤ちゃん」など。人物風土記には、隣のおじさん・おばさんや、小中高の同級生が載る場合もあり、これが人気の秘密かもしれない。「こんにちは赤ちゃん」は、申し込んでから2ヶ月ぐらい待つ場合もある。都筑区版の記者たちが語る「あっとほーむデスク」も、隠れファンが多いという。

編集や制作の仕事場は、活気と若さがみなぎっている。もっと乱雑な部屋を想像していたが、原稿や資料などがきちんと整理されていた。仕事場の一端を、下の写真でごらんいただきたい。

編集室の内部。記者達が意見を交わしていて、活気が満ちている。 記事の原稿が、ファイルボックスにきちんと整理されている。 記者が集めた情報を、マックを使ってレイアウトしている制作担当者。


  都筑区を取材している記者たち

都筑区版を担当している記者は編集長を含め3人。区内を知り尽くしてる3人に、魅力を話してもらった。

都会的で、なおかつ緑が多いところですかね。地域の方も、ボランティアや市民活動に熱心ですばらしいと思います。「都筑区」というブランドは、人が築いているんだなと、意識の高さを実感しています(S編集長)
素晴らしい環境と、人の温かさを感じるところです。農業も盛んに行われており、よく取材でお世話になっております。おいしい野菜も魅力の一つだなと思います。(U記者)

道路が整備され、緑も豊かで心が和みます。ここに住めたらいいかなと実感している毎日です。これからも、様々な方面で勉強していきたいと思っています。(I記者)


「○○会があります、珍しい花が咲きました・・など、身近な情報を寄せて欲しい」「記事にたいする意見・感想・要望も気軽にお寄せ下さい」という話だった。会社のHPの投稿欄か、電話(913-2711)で受け付けている。自分が提供した情報が記事になるかもしれない。タウンニュースの記者になったつもりでの情報さがしを、ぜひお勧めする。(2008年6月訪問 HARUKO記)

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