都筑区平台にある横浜市資源循環局都筑工場を、3人で訪問してきた。紅白の煙突が立っている所と言えば、だれでもおわかりだろう。 借りてきた空撮写真に、建物の説明を加えてみた(左)。 収集事務所は、各区に1ヵ所ずつあり、ごみを収集する業務をしている。 今回訪問した都筑工場は、横浜市全体で5つしかないごみを燃やす工場のひとつである。 私たちは、工場管理棟と工場棟におじゃました。収集事務所と工場棟は、敷地が別になっていて、入口も違う。 工場長の近藤さんと技術管理係長の田嶋さんは、現場を回りながら、熱のこもった説明をしてくださった(右)。
都筑工場は、1984(昭和59)年に竣工した。高層ビルどころか民家もまばらな頃で、煙突だけが目立ったものだ。20数年前のことになる。 この工場では、都筑区・青葉区の全体と港北区・緑区の一部のごみを焼却している。他の工場は、鶴見・保土ヶ谷・旭・金沢。この5つの工場で、横浜市民約363万人と事業所のごみを処理している。 横浜市が「G30」という目標をかかげ、ごみの分別収集に踏み切ったのは2005(平成17)年。G30は、平成22年度のごみ量を、平成13年度に対し、30%減らそうというものだ。取材に応じてくださった近藤さんも田嶋さんも「30%削減などできるのかなあ」と、当時は半信半疑だったという。 ところが、家庭ごみやその他のごみの総量は、確実に減ってきている。平成13年度に約161万トンあったものが、平成17年度には約106万トン。分別収集を始めた年度に、33.9%も減ったのだった。 5年も前倒しで、30%削減は達成した。資源循環局の努力もさることながら、市民の意識が高いからと思われる。 平成18年度には、103万トンで35.9%削減。G30どころか、G36になろうとしている(左は資源循環局提供のパンフレット)。 このことで、新しい焼却工場の建設がストップされた以外に、港南工場と栄工場の2ヶ所が撤去されることになった。2工場をなくすことで、1,100億円の節約になる。 効果はまだまだある。平成13年度と17年度を比べると、CO2(二酸化炭素)の排出量は75万トンも減った。これは、杉の木5,400本が1年間に吸収するCO2の量に相当するという。市内に杉の木を5000本も植える手間や土地の確保を考えると、驚きの数字だ。 当然ながら、人件費の節約にもなっている。
工場に集められたごみが焼却されて灰になるまでの流れは、左下のイラストを見るとわかりやすい。都筑工場のHPを拝借した。 @は投入ステージ 収集車がごみを投げ入れるところ。 Aはごみピット ピットは穴のことで、ごみをためるところ。ピットの空気が焼却炉に入り、臭気を分解する。 Bはごみクレーン ガラス越しに見学していた小学4年生から、思わず歓声があがった。大きなクレーンが細かいごみをつかむサマが「カッコいい」と話していた。 Cは焼却炉 火格子焼却炉といい、高温焼却ができるすぐれもの。特殊耐熱鋳物製の火格子が1つの炉に844本あり、焼却をうながしている。 ちなみに、焼却炉は3つあったが、ごみが減ったことで、今は交代で1炉を使っている。ごみが多い時は2炉使うこともある 「ごみを燃やす燃料はなんですか。石油ですかガスですか」と、聞いてみた。「通常は燃料を使わなくても燃えるんです。内部の温度が850度にもなるので、自然発火します」という答えだった。焼却炉を始動するときや、一時停止の後だけ、都市ガスを使う。 Dはボイラ Eは減温塔 Fはバグフィルタ 排ガス中の粉塵をとりのぞくフィルタ。 Gはえんとつ 高さは130メートル。内部は鋼板、外部は鉄筋コンクリート製。冬場に白い煙のようなものが上がる、排ガスに含まれる水分が水蒸気になったもので、煙ではない。 Hは灰コンベヤ Iは灰ピット 灰が集められる場所 Jは灰クレーン 灰は、泉区神明台にある埋め立て地に運んでいる。満杯になりそうなので、平成23年からは、前からあった南本牧の処分工場に一本化する。 焼却灰の一部は、道路を作るときの石の代替品に使っている。セメント材料の代替品にも使いたいところだが、コスト面で実用化にはいたっていない。 DのボイラとKの中央管制室 Lのタービン発電機 の説明は次の項で。
上のイラストKの中央管制室(左)で、焼却炉の運転をしている。24時間稼動しているので、職員は交代勤務。 工場内のすべてのデータが集められ、数字が、刻々と変化していた。この数字を見ながら、完全燃焼するためにコントロールしている。 右のNOX(窒素酸化物)は97以下に、HCL(塩化水素)は50以下に、CO(一酸化炭素)も、50以下に抑えねばならない。 この時期のごみは燃えやすいごみで、数字は完全燃焼を表している。梅雨時や正月後は燃えにくいごみが多く、苦労するそうだ。 イラストにあるボイラでは、燃焼による熱で蒸気を作っている。蒸気の大半はタービン発電機に送られ、電気になる。1炉でもおよそ6000KW得られる。右の数字5865KWは、瞬間的な発電量を示している。 燃焼で得られた電気の半分は、工場内の冷暖房や給湯や余熱施設(温水プールなど)に使う。残りは電力会社に売却する。電力会社に電気を売っていると聞き、驚いてしまった。 発電で得られる利益は、都筑工場だけで平成18年度は2億9000万円。横浜市全体では、23億円にもなる。新しくできた金沢や鶴見の工場は発電能力が高いので、都筑工場の数字は小さい。
訪問した日にも、小学校4年生が社会科見学に来ていたが、この工場だけで年間8000人もの来訪者がある。ただし、大人の見学者は少なく、消費生活推進委員など、平成18年度は354人だけだった。申し込みを受け付けている(TEL:045-941-7911 FAX:941-7912)ので、見学をお奨めする。ごみに対する理解が深まるだけでなく、アッと驚くことが多いと思う。 申し込むのが面倒という方は、9月末にオープンしたばかりの「G30ひろばつづき」に行ってみたらどうだろう。工場管理棟にある。都筑工場独自の施設で、ごみの分別や発電の仕組みなどをわかりやすく展示してある。係の人が、質問にも気軽に応じてくれる。 手回し発電機で動く模型の電車を、小学生が喜々として動かしていた。ごみを正しく分別すれば、きちんと嵌るパズルコーナーもある。環境に関するたくさんの書籍もそろっている。
18区それぞれで140所帯のサンプルを調査し、分別が正しくできているかどうかを調査している。それによると、分別がまだ出来ていない人もかなりいる。 「ぜひ気軽にG30ひろばつづきに足を運んで欲しい」と近藤さんも田嶋さんも話していた。ふたりの言葉から、ごみに対する理解を深めてもらい、分別が出来てない人をゼロにしたいという熱意が伝わってきた。私達も、捨てればごみ・分ければ資源・・を再認識したい。 (2007年11月訪問 HARUKO記) |
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