ハーモニーみどり緑区中山町にある横浜市シルバー人材センターの緑事務所を、訪問してきた。地下鉄・JRの中山駅から歩いて7分ぐらいかかる。

緑事務所は、「ハーモニーみどり」(左)という4階建ビルの2階にあった。

ちなみに、横浜市の施設である「ハーモニーみどり」は、社会福祉協議会・中山福祉機器支援センター・中山地域ケアプラザ・中山地区センターなどが入居している。福祉関係のデパートのようなものだ。

本部の担当部長の森さんと、緑事務所所長の湯澤さんからお話をうかがった。



エンディングを迎えるまで仕事をしたい 

1970年代終わりに、元東大総長で経済学者の大河内一男氏が、「日本人のほとんどは、エンディングを迎えるまで、なんらかの仕事につきたいと思っている」と、高齢者の人材センター設立を提案した。

高齢化が社会問題になったのは、ここ10年ぐらいのことだ。それよりかなり前から、社会の動きをキャッチしていたことになる。

横浜市シルバー人材センターの設立は、昭和55(1980)年。去年30周年を迎えた。横浜は、全国でも最大の会員数と事業実績を残している。

緑事務所は都筑・緑・青葉の3区を担当しているが、他に、神奈川・南・保土ケ谷・磯子・戸塚の事務所があり、横浜18区をカバーしている。本部は、港南区の上大岡にある。

緑事務所(左)には、常勤4人の職員と、週3日勤務の福祉家事援助サービスコーディネーターが2人いる。

訪問した日も、職員のみなさんは忙しそうに働いていらした。



 臨時的・短期的な就業

シルバー人材センターの役割は、簡単に言うと、会員(ほぼ60歳以上で働く意欲のある人)と、仕事の発注者(企業・家庭・公共機関など)の橋渡しだ。

「会員に登録すると、希望の職につけるのでしょうか」と聞いてみた。

「基本的な就業は、週に20時間以内と決まっています。労働時間の制約もあるし、高齢者ということで、職種は限られています。希望の仕事に就ける方は、そう多くはないんです。営業はしているのですが、こういう不景気な時だけに、難しいところです」と、森さんと湯澤さん(左が森さん、右が湯澤さん)から同じ答えが返ってきた。

登録している現在の会員数(平成23年8月現在)は、下の表にあるように、3区合わせても1500人に満たない。60歳以上の高齢者が急に増えているので、登録者数はもっと多いのではないかと思っていた。

  都筑区   緑区 青葉区   計
男性 219人  420人   381人 1,020人 
女性  101人  166人  168人  435人 
  320人   586人 549人  1,455人 

ちなみに、4月から8月の就業率は、69.8%だという。

日本の景気はなかなか上昇しないし、非正規雇用の若者が増えている。シルバーの働き場所が減るのも分かるような気がする。現役のときに身につけた技術や事務を活かせる仕事があれば、双方にとって理想だと思うが、簡単にはマッチングしないのが現状だ。

「シルバーだからこそ頼みたい、安心だ」」と感じていらっしゃる方も多いと思う。「こんな事でも頼めるかしら」と迷っている方は、シルバー人材センターに相談してみたらどうだろう。電話は045-935-0677。


    仕事の依頼の種類も変わってきた

センターの登録者は、DIY(大工作業)や緑地管理などの技能の講習を無料で受けることができる。ただし応募者が多い場合は抽選になる。仕事先での挨拶など、基本的な決まり事も研修している。

受注が多いのは、植木の手入れ・庭の除草・家事サービスだという。スーパーマーケットのカート整理も評判がいい。市の選挙公報やチラシのポスティングは、健康のために引き受けている人が多い。

発足の30年前に比べ、需要が減ってきた職種もある。毛筆宛名書きや賞状を書く仕事は、少なくなっている。パソコンに毛筆のフォントが入っていて、あえて手書きにこだわらない人が増えたからだ。

襖や障子の張り替えも、減っている。和室が少なくなっているうえに、素人でも簡単にできる素材が、ホームセンターで売っている。

最近の住宅は、職人の細かな技術を必要としていない。匠の技術が引き継がれていないので、名人芸の仕事をする大工が少なくなった。だから大工仕事も、簡単な仕事しか引き受けられなくなった。


植木の手入れ は一番需要が多い 家事サービス  スーパーマーケットのカート整理 
チラシなどのポスティング  大工仕事  毛筆での賞状 や宛名書きの需要は減っている

人材センターへの依頼の移りかわりを聞いていると、時代の変化を感じざるを得ない。とはいえ、高齢者が増える今、その年齢でなくてはできない仕事もあるはずだ。たとえば、区内にあるケータイを開発している会社が、高齢者に使いやすいケータイを作るために、モニターの仕事を依頼してきた。

若者には出来ない仕事、現役世代では出来ない仕事、人生経験を積んでいるからこそ出来る仕事、同世代だから頼みやすい仕事をどんどん見つけてほしい。働いている元気な高齢者が増えれば、経済も活性化するし、医療費は減るし、町全体が明るくなる。


会員の交流と親睦

緑事務所では、会員の親睦や仲間づくりのために、月に1度(第4火曜の午後1時半から)、交流会を開いている。毎月講演者を決めているが、一方的な講演にならないように、質問や意見も活発に交わしている。

取材に訪れた日は、「ヒマラヤのスライドとトレッキングよもやま話」の講演(左)をしていた。すこし拝聴させてもらったが、どんどん質問も出て、和気藹々の雰囲気。

今年度は、10月が「園芸あれこれ」、11月が「海外よもやま話」1月が手品、2月が「県警講演」、3月が「映画鑑賞」。面白そうな講演が予定されている。交流会への参加は、人材センター登録者に限られるが、登録料は1200円と安い。

交流会以外に、いろいろなサークル活動もしている。

水彩画、バードカービング、手芸(左)、俳句会、写真の会、社交ダンス、歩こう会など。

写真を撮りながら、絵を描きながら、手芸をしながら、仕事の情報も得られるかもしれない。なにより、楽しそうに交流している姿がいい。

事務所の壁には写真や絵などの作品が展示してあった。

中には、自分にマッチングした仕事に出会えず、交流会や会員のサークル活動だけに参加している人もいるが、幸せな高齢者が増えることはいいことだと思う。

今年度は財団法人だが、平成24(2012)年の4月から公益財団法人に認定される予定。さらなる営業努力が必要だと思うが、高齢者だからこそできる仕事、高齢者にしかできない仕事が、きっとあるはずだ。仕事の発注者と会員双方が喜ぶ顔が見たいものだ。   (2011年9月と10月訪問 HARUKO記)

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