都筑区東方町1401にある「JA横浜きた総合センター」(左)を、3人のレポーターで訪問してきた。

きた総合センターは、農業専用地域(以下、農専と記す)に建っている。商業ビルや高層マンションが林立する都筑区北部とは一変し、周囲にはビニールハウスや畑が広がっている。

とは言え、地下鉄「仲町台駅」にも近く、すぐ側を、幹線道路の新横浜元石川線が通っている。(下の地図参照)。

組織農政課の方々が、年度末という多忙な時期にもかかわらず、取材に応じてくださった。



 JA横浜は5年前に発足 

ちょうど5年前の2003(平成15)年4月に、横浜北・横浜中央・横浜南・鶴見・保土ヶ谷の5農業協同組合(以下、農協と記す)が合併して、JA横浜が発足した。

しかし元々は古くからある全国規模の組織で、1900(明治33)年に作られた「産業組合」にまでさかのぼる。太平洋戦争中は、国の食糧管理下におかれ、「農業会」という組織になった。戦後の1948(昭和23)年に、農業会を改組する形で農協が作られた。JAの名称を使い始めたのは、1992年である。

都筑区内には、きた総合センター以外に、都田都筑中川北山田東方の4支店があるが、北山田支店と東方支店は金融や共済だけを扱っている。


 都筑区には農地と農家が多い!  

40年前の都筑区は、極端なことを言えば田と畑と里山しかない地域で、その中に農家が点在していた。現在、農地がほとんどない都筑区北部に住んでいることもあり、ニュータウン完成後は、大規模な農地は全くなくなったと思いこんでいた。今回の取材で、都筑区は市内18区のなかで農家戸数がいちばん多い区だとわかった。2位は青葉区、3位は港北区。

そして農地面積は2番目に多い。ちなみに1位は泉区、3位が青葉区、4位が緑区、5位が旭区、6位が戸塚区、7位が港北区。都筑区と接している区はすべてこの中に入っている。この地域全体が、大都市横浜の中で、農業が盛んだといえる。40年前の名残はあったのだ。


「きた総合センター」は東方農専にあり、隣接の折本農専と合わせると103ヘクタールもの農地に囲まれている(上地図は、横浜市環境創造局北部農政事務所提供)。100ヘクタールは小学校100校分というから、その広さに驚いてしまった。農協本来の業務である農業指導・農産物の販売という点では、絶好のロケーションにある。

ちなみに、農専地区は、横浜市が都市環境の保全を目的に、1969(昭和44)年に創設した。横浜全体では27ヵ所。都筑区は7ヵ所といちばん多い。

これも初めて聞いた話だが、全国の市町村別に見た収穫量では、横浜はコマツナが全国1位、ほうれんそうが6位、キャベツが9位という。

なかでも、都筑区はコマツナとほうれんそうの生産は市内1位だ。東方農専の畑も、コマツナ(左)の収穫を待つばかりだった。



    多岐にわたる事業    


都筑には、農専地域以外の農地もところどころにある。とはいえ、横浜市や都筑区の経営耕地面積や農業人口は年々減っている。

左は横浜市と都筑区の「経営耕地面積の推移」(数字は北部農政事務所提供)を、グラフ化したもの。15年間の5年毎の統計だが、横浜市も都筑区も右肩下がりである。

農地が減り続けている現状の中で、農業協同組合・JAの果たす役割はなんなのだろうか。JAの主な事業について聞いてみた。

農産物の販売や直売所の経営、肥料・農薬・農業機械の購買、ガソリン・プロパン・重油の提供、Aコープ(スーパーマーケット)運営、農業指導など農業に関する業務。他にJAバンクや共済など金融に関する業務。JA葬祭・高齢者福祉、観光事業など組合員の生活を支援する業務。

 組合員の生活のほとんどを、カバーしていると言っても過言ではない。きた総合センターの広い敷地にも、金融や共済を扱う東方支店、米や資材の経済倉庫、野菜出荷場、農業体験農場、植木せり市圃場、メルカート(市場)、野菜直売場、重油タンク、料理教室、デイサービスのサロン、精米所などがあった。JAバンク・メルカート・野菜直売場・精米などは、組合員ばかりでなく一般の利用者も多い。特に精米所は、大好評なので2台設置している。

金融と共済を扱っている東方支店 ビニールハウス用の重油タンク。 農機具の修理
デイサービスの送迎の車と会場 メルカート内に設置されている電子図書館。病害虫や雑草診断を簡単にできる。無料。 10キロの米を200円で精米してくれる自動精米所。


 「はま菜ちゃん」・「ハマッ子」の野菜を食べよう!   

最近は、地元の農産物を食べようという「地産地消」が各地で提唱されているが、横浜でも取り組んでいる。市内で作られる7万トンの野菜は、市民が食べる野菜の20%。横浜住民の5人に1人は、横浜野菜を食べていることになる。

横浜では、市内で作られる野菜26品目と果物4品目を「はま菜ちゃん」というブランドに認定している。JA横浜のブランドは「ハマッ子」と呼ばれ、両者は重複している場合が多い。はま菜ちゃんやハマッ子の野菜や果物は、 JAの直売所個人やグループの直売所・アンテナショップばかりでなく、一般のスーパーでも扱っている。「都筑区○○さんのコマツナ」という札も見かける。はま菜ちゃんやハマッ子の幟をたてている店も多い。

農薬の軽減にも取り組んでいる。「特別栽培農産物」は、慣行レベルに比べ農薬の使用回数が50%以下、窒素成分量が50%以下で栽培される農産物のことを言う。横浜産のコマツナ・ほうれんそう・トマト・ナス、ジャガイモは、特別栽培農産物だ。

中国野菜の安全性が疑問視されている今、消費者は安全なものを求めている。その点、地産地消は、遠距離輸送のコストも削減できるし、ガソリンを使う量が減り環境にも良い。鮮度も良い。農薬の使用回数も少ない。こうなれば言うことない。これからは、はま菜ちゃんとハマッ子のマークを探しなら、買い求めようと思う。

とれたて食べよう「横浜野菜」。 野菜直売場に並ぶ新鮮な野菜。 きた総合センターのメルカート内では幟を売っていた。

農家戸数は横浜で1位、農地面積が2位と知って、自分の認識不足が恥ずかしかった。この訪問を機会に、もっと地元産に関心を持たねばとつくづく感じた。

最後にJAにお願いがある。日本の食糧自給率を高めるために、JA全体で強力に取り組んで欲しい。農地と農業人口が減っていくことが心配でならない。(2008年3月訪問 HARUKO記)

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