牛久保西1丁目にある都筑区医師会を訪問してきた。医師会の名前は聞き慣れているが、都筑区内にこうした独立のビル(左)があることを知らなかった。

「医師会って具体的にどんな活動をしているんだろう?」の素朴な思いから、訪問することにした。

取材は夕方6時半に始まった。47回の訪問の中でこの時間帯は初めてである。というのも医師会会長の水野恭一さんは、自分の診療所・水野クリニックをお持ちである。診療と次の会合の合間に、やっと取っていただいた時間だった。水野会長と事務局の西澤真弓さんから話をうかがった。


 医師会は北里柴三郎らが設立

日本医師会は、1916(大正5)年に、学術専門団体として北里柴三郎が中心になって設立した。今のような社団法人として認められたのは1947(昭和22)年。日本医師会の会員数は約165,000人。うち開業医が約85,000人、勤務医が約80,00人(2008年12月現在)。

「日本医師会は47都道府県医師会の会員で構成されていますが、それぞれの医師会は独立しています。だから都筑区独自で活動をしています」と水野会長(左)。

日本医師会のサイトは、目の不自由な人や高齢者のために、音声読み上げサービスや文字拡大サービスをしている。さすが医師会のサイトだと感心してしまった。

新型インフルエンザに関する医療情報はもちろんだが、「国民の健康を守るために、たばこ増税賛成」の署名活動などもしている。

医師会は圧力団体というイメージを勝手に作っていたが、医師会のホームページを読み、水野先生の話を聞いているうちに、失礼な誤解をしていたことに気づいた。


病院と医院の違いを知っていますか?

水野先生は、2007(平成19)年4月に3代目の会長として就任した。初代はつづき病院の中野先生、2代は斉木クリニックの斉木先生。15年しか経っていない区だから、まだ3代目である。

でも水野クリニックがこの地に開院したのは1981(昭和56)年。農村地帯が近代的な街に変貌した様子や医療事情の変遷を、誰よりもご存じである。

「都筑区医師会に加入している医療機関はいくつでしょう」。「病院は3つですが、医院が125あります」。「え!病院は3つしかないのですか」。「病院というのは、20床以上持っている施設で、昭和大学横浜市北部病院(左)・山本記念病院・つづき病院です」。

私はこの時まで、病院と医院(クリニック・診療所)の区別を知らなかった。個人病院という言葉を平気で使っていたが、20床以上持つ個人病院はめったにないのだ。今は○○クリニックとつける医院が増えている。

医師会加入は強制ではないので、資生堂・パナソニック・アオキなどの企業診療所やメガネ屋所属の眼科は加入していない。個人医院で加入していない方もいる。


 区民の安全と安心にかかわっている

「医師会は区民の安全と安心全般に関わっているんです」と水野会長。でも、具体的に何をしているかわからない。私は、学校・保育園・幼稚園の校医ぐらいしか思いつかなかった。

ところが医師会取材を思い始めたころから気をつけていると、会長は、15周年の記念式典・区民文化祭にも出席している。本来の医療業務以外でも、いろいろとお忙しい。

事務局の西澤さんが、会長が出席する外部委員会のリストを作ってくれた。他にも副会長などが出席する委員会がある。これをみると、区民の安全と安心に関わっているというのは、単なるキャッチフレーズでないことが分かった。

・都筑区社協(理事)  ・都筑区懇話会(副会長)  ・センター北商業振興会(理事)
・北部夜間急病センター運営委員(理事)  ・ふるさとづくり委員会(副委員長)
・北部病院連絡協議会  ・横浜労災病院地域支援委員会  ・横浜労災病院連絡協議会
・都筑区保健福祉推進会議(議長)  ・健康づくり月間実行委員会(委員長)  ・横浜医療協同組合(理事)

区民祭りでの医師会のテント内では、相談にものっていた。 公会堂で開かれた防災に関する講演会 クリニック向けの勉強会

会長ばかりではなく、区民まつりでの医療相談、防災活動に関する講演会、区民向けの医療講演会などには、たくさんの先生方が協力している。警察の協力医にもなっているので、都筑警察に拘留されている人の診察を頼まれることもある。

区民の安全と安心を担っているという自負が、医師会の原動力になっている気がする。区民としては本当にありがたい。


 ワクチンが足りない

訪問したのは12月初旬。新型インフルエンザが急増している時期だった。左写真は、11月末に行った「強毒性インフルエンザ」発生を想定しての訓練。医師会はこうした訓練もしている。

「最初のころは、もっと重症化すると思われていたので、北部病院しか診療しなかったのですが、今は多くの医院が診察しています。予防接種の優先順位が決まっても、ワクチンが足りないんです。そもそもワクチンを作る工場が足りません」と水野先生は語る。

内科・小児科の水野クリニックにも、1日、100本以上の電話がかかる。「受付は大変ですよ。怒鳴られたり、なんとか順位を替えてくれと理不尽な要求をする人が多いんです」。「今は医療機関に従事する医師や職員でも接種できない人がいます。僕もほかの職員に回しているので、まだ接種していないんです」。

「でも先生が倒れたら困るのは患者ですよ。ぜひ接種なさってください」と、私からもお願いする。

この訪問記がアップされるころには、流行がおさまり、ワクチン事情が好転していること祈るばかりだ。


  休日急患診療所・訪問看護ステーション

医師会のビルには、左のような看板がかかっている。「都筑区医師会は、医療センターという社団法人も運営しています。その中に、休日急患診療所や訪問看護ステーション等があります」と事務局の西澤さんが説明してくれた。

休日急患診療所(911-0088)の診療時間は、日曜・祝日・年末年始(12月30日〜1月3日)の午前10時〜午後4時。診療科目は小児科と内科。特に乳幼児をかかえているお父さんお母さんには、休日に看てもらえる所があるだけで、心が安まるに違いない。

在宅事業部(911-6100)には、訪問看護ステーション・ヘルパーステーション・居宅支援センター・介護福祉用具センターがあり、在宅で療養を続けている方や介護する家族を支えている。

医師・看護師・ケアマネジャー・ヘルパー・理学療法士が密接に連携をとりあっているので心強い。左はスタッフのみなさん。

ガンの末期を家で過ごしたい人もいるだろうし、寝たきりでも家族の中で過ごしたい人もいるだろう。こういう方々や家族をチームで支えるステーションが、区内にあることを知らなかった。悩みをかかえている人は、ひとりで抱え込まないで、まず在宅事業部に相談してみたらどうだろう。


  人口に対し医療機関が多い

「都筑区医師会が、かかえている問題はありますか」

「そうですね。全国的に見ると医師不足が深刻な地域もありますが、ここは人口に対し、医療機関が多いのです。地下鉄駅の周辺に新しいビルができると、医院を募集するので、どんどん増えています。以前は医院の適正配置委員会があったのですが、今はありません。撤退した医院もいくつかあるんですよ。でも患者さんにとっては、ゆっくり診療してもらえるので、メリットが多いと思います」。

私たち都筑区民が、恵まれた医療環境にいることを実感しながら、医師会を後にした。(2009年12月訪問)
                                                       (HARUKO記)
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