都筑区折本町にある「IKEA港北」(左)を、3名で訪問してきた。IKEAが扱っているのは、家具だけではない。インテリアグッズ・おもちゃ・キッチン用品など、日常生活に欠かせない生活雑貨も売っている。

所在地が都筑区なので、私たち都筑区民には「IKEA都筑」の方が嬉しいが、第三京浜「港北インター」の目の前にあることや、港北区の知名度からして当然かもしれない。

敷地面積は48,000平方メートル。広さの比較に使われる東京ドームが46,755平方メートルなので、東京ドームより広いことになる。

この広い敷地に、地上4階の建物と2100台分の駐車場が建っている。パートタイマーをのぞく従業員は、およそ500名。元旦以外は1年中無休、営業時間だけでも10時から21時と長いので、従業員は交代で勤務をしている。

広報担当の方が、店内やイケアの理念をてきぱきと説明して下さった。一緒に店内を回ったことで、客として漫然と歩き回っていたとは違う視点で見ることができ、非常に参考になった。


ロゴはスウェーデンの国旗と同じ色

イケアのロゴも、店の外観も紺青と黄色の2色で、スウェーデンの国旗(右)にちなんでいる。この事からもわかるように、イケアはスウェーデンで生まれた会社。上の写真にも、スウェーデンの国旗2本と日の丸1本が見える。

現在は世界35ヶ国に250店を出店しているが、今後どんどん増える見込みだという。日本での1号店は、2006年4月オープンのIEA船橋。2号店のIKEA港北は、2006年9月15日に開店。まだ1年も経っていない。来年は、神戸や大阪に出店する予定である。


IKEAの社名は創業者の名前と生まれた場所

IKEAの社名は、ローマ字読みをすればイケアと読めるので、日本人にも馴染みやすい。IとKは創業者のイングヴァルト・カンプラードから、Eは生まれ育ったエルムタリッドという農園の名、Aは農園があるアグナリッドという村の名にちなんでいる。

創業者のイングヴァルト・カンプラード氏は、スウェーデン南部の農村で、1926年に生まれた。17歳のときに、勉強のご褒美として父親からもらった資金で事業を始めたという。ボールペン・クリスマスカード・草花の種などの雑貨を販売した。このとき1943年に、IKEAの商標登録をしているところが、並ではない。

1955年に独自に家具のデザインを開始、1958年に家具の1号店をスウェーデンにオープン、1973年に北欧以外最初の店をスイスのチューリッヒにオープン。スイスで成功したので、以後、ドイツ・イギリス・アメリカ・中国・ロシアなどで続々と開店し、今や35ヶ国にIKEAの店がある。

カンプラード氏は1986年に社長を退いたが、80歳を過ぎた今も最高顧問として関わっている。


グローバル化

誕生はスウェーデンだが、今は地球規模で展開している。IKEA港北の社員も日本人ばかりではない。スウェーデンはもちろん、イギリス・ドイツ・アメリカ・タイなど10ヶ国の社員がいる。さまざまなカルチャーをもった社員が1つになった時に、IKEAの価値が発揮できると考えているからだ。

6月22日に行われた夏至祭での「魚釣り」(左)イベントでも、IKEA FAMILYの子ども達に、外国人社員が上手な日本語で名前や年齢を尋ねていた。手前の女性はスウェーデン人のミカエラさん。

グローバル化は、社員の国籍だけではない。木材など原材料も世界各国で調達しているし、サプライヤーと呼ぶ工場も世界中に分散している。

IKEA独自のデザイナーもいろいろな国から集まっていて、日本人もいる。世界中でロングセラーになっているフレイラビント クッションは日本人のKazuyo Nomuraさん、ボエング アームチェアも日本人のNoboru Nakamura氏の作品。


高い品質・良いデザイン・手頃な価格

扱っている商品は1万点にも及び、カラーバリエーションも含めるとその何倍にもなる。もちろん国や地域によってヒット商品は多少違ってくる。日本の船橋と港北を比べた場合でも、売れ筋は少し違う。毎年25%ほど新商品が作られ、8月発行の新しいカタログに掲載される。

イケアのすごいところは、すべてのアイテムが高い品質・良いデザイン・手頃な価格を目指していることだと思う。

矛盾しているように思えるこの3つを実現するために、原材料調達先の検討、サプライヤーの検討、大量仕入れによるコストダウンをはかるなど、さまざまな工夫をこらしているそうだ。

なかでも、客が自分で棚から商品を取り出し、持ち帰り、組み立てるという独特のセルフサービス方式が、安い価格を実現させている。

2階のショールームで商品をチェックする→1階のセルフサービスエリアの棚(左)から商品を取り出す→フラットパックというコンパクトな梱包になっているので、自家用車などで持ち帰る→設置・組み立てを自分でする。

組み立てが苦手な人、自家用車を持っていない人のためには、別料金で代行サービスも行っている。


69のルームセット

IKEAに行ったら、まず2階のショールームに足を運ぶといい。通路の右側はルームセッティング、左側にはそれに関したプロダクツが置いてある。

リビングルーム・リビング収納・玄関家具・オフィス家具・キッチン・ダイニング・ベッドルーム・ワードローブ・バスルーム・キッズの順序で、ルームセッティングがしてある。その数なんと69。いかに、ルームセッティングに力を入れているかがわかる。

広さ55平方メートルの2LDKをまるごとセッティングしてあるコーナーもあった。生活に密着したインテリアのアイディアが具体的に提示されてあるので、わかりやすかった。


ルームセッティングのベッドに寝転がることも出来るし、ソファにふんぞり返ることもできる。子ども部屋ではピョンピョン跳ねることもできる。戸棚を自由に開閉してもいい。ダイニングのテーブルにセットされたアイロン台(左上)を見せてくれたが、自由に開閉しなければ、こんな装置があることもわかりにくい。「どんどん触って下さい」と話していた。

地元の店舗経営者のニーズに応えるために、スモールビジネスのルームセッティングもいくつか用意してあった。喫茶店・インターネットカフェ・イベント会社・美容院開設に必要なグッズは、すべてIKEAで整えることができる。左写真は美容院のルームセッティング。



環境への配慮 

IKEAの家具の主材料は木材(左)なので、環境を損なわずに木材を調達するにはどうしたらいいかを常に考えている。

原生林を伐採することはせず、植林された森の木材だけを使う、梱包材や家具のリサイクル、小枝はスプーンなど小物に使うなど、さまざまな配慮をしている。

また、2001年には自社鉄道 IKEA Railを開業した。ドイツ・ベルギー・オランダ・スウェーデンのサプライヤーと主要倉庫から、直接原料や製品を自社鉄道で運んでいる。大型トラックなどの輸送が減少したことで、二酸化炭素排出量がおよそ7割、粉塵は半分以上、炭化水素は8割も減らすことができたという。


来店者と地域との関わり

平日はおよそ1万人、土日となると3〜4万人もの来店者がある。平日の午前中は、子連れの30代のお母さん達がグループで来店する。エンタテイメントの場としても利用されているようだ。授乳室、キッズシネマ、子どもの遊び場、子ども部屋のディスプレイ、レストランもある。店にいるだけで楽しくなる演出がいっぱいあるのだ。

平日の夜は、20代の若者が「新横浜駅」から出ているシャトルバスで来店、土日は若いファミリー層が多い。横浜や神奈川県ばかりでなく、東京の港区・大田区・世田谷区・渋谷区、静岡県や名古屋方面からの客も大勢いるそうだ。

近隣の町内会と定期的に話し合いをし、だれもが自由に参加できる祭りを開催するなど地域住民との繋がりも大事にしている。

6月22日の夏至当日に、IKEA港北のエントランス広場で、夏至祭が行われた。夏至祭はスウェーデンの伝統的な祭り。本場では、民族衣装を身につけた人達が、草花を飾った柱のまわりを踊り歌いかつ食事を楽しむそうだ。

IKEA港北では、スウェーデンフォークダンス愛好会の人達が、フォークダンスを披露(左)し、見物していた大人も子ども踊りの輪に入って楽しんだ。参加した人は、スウェーデンという国を身近に感じたのではないだろうか。
(2007年6月訪問 HARUKO記)

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