センター南とセンター北の両駅から徒歩10分、都筑区大棚町631にある「第一フォーム(株)」を訪問してきた。 ニュータウン開発地域に入っていないせいか、駅から近いとは思えないほど長閑な環境にある。しかも写真(左)で分かるように、看板も表札もない。「こういうのを紺屋の白袴と言うのだな」とつぶやきながら、訪問を告げた。 この会社を知ったのは最近である。「若大将のゆうゆう散歩」の加山雄三さんはじめ、宮下純一さん、毒蝮三太夫さんなど有名タレントが訪問してメディアに登場しているのに、一度もテレビで見たことがなかった。
「紺屋の白袴」と思ったのには訳がある。第一フォームの主な業務は、発泡スチロールを使っての看板やオブジェやショーウインドウーのディスプレー作成である。なのに自分の会社には、看板もかかってない。外見より中身で勝負という姿勢が伝わってきて、初っ端から感心してしまった。 この会社を知ったのは、数ヶ月前に区民活動センターの看板を見たからだ。区民活動センターは区役所の1階にあり地域活動や区民を支えているが、何も標識らしきものはなかった。表札ができて、格段に入りやすくなったような気がする。 気をつけて庁舎内を見回すと、第一フォームの製品は図書館や5階にもあった。
社長の渋谷正明さん(左)は、何度も取材されているにも関わらず、ご覧のような爽やかな笑顔で応じてくださった。あまりに若い社長なので、思わず「何歳ですか」と聞いてみた。なんと47歳だという。とてもそんな歳には見えない。大学時代に始めたアメリカンフットボールを今も続けていることが、若さの一因かもしれない。 会社の創業は、31年前の1986年。、現社長の父親が、発泡スチロール専門の加工会社を設立したことに始まる。当時は、梱包材の発泡スチロールや段ボールを扱っていた。 私達が発泡スチロールで思い浮かべるのは、魚類を入れる箱やクッション材である。 「でもね、梱包業界の利益率はとっても低いのです。原料の石油が為替の変動を受けやすいし、ダンピングされるのが常なのです。これでは利益が出ません」と渋谷さん。 渋谷さんは最初から父親の会社に入ったわけではない。大学卒業後は、旅行会社大手のJTBで法人相手の仕事をしていた。40ヶ国は回ったという。 「考えることがあって、29歳の時にJTBを辞めたんです。その後コンピュータの会社でマーケッティングをやっていました。この時に展示場を担当したことが、今に生きているかもしれません」 第一フォームに入社したのは35歳の時だ。「梱包だけでは利益率が低いので、どこでもやっていないモノ、人がやってないモノを作らねばと真剣に考えました」 「幸いなことに、理系の大学を出た兄が発泡スチロールを熱線でカットする機械”ナイスカッター”(左)を発明。テクノファーストという別会社を作りました。兄がこの機械を作ってくれたおかげで、発泡スチロールをいかようにも加工できるようになりました。金属や木材ではできない立体造形を自由自在に作れるのです」 第一フォームとテクノファーストは敷地も隣あっている。兄弟が助け合い自分にないものを補っている話を聞くと、羨ましくなる。亡きお父さんも安心しているだろうと余計なことまで想像してみる。
会社のサイトを開いてまず目に飛び込んでくるのが、HappoでNipponをHappyに!というキャッチフレーズ。ppが並んで面白い組み合わせだが、発泡スチロールで日本を幸せに!ということだ。「HAPPONプロジェクト」と名付けている。 「どこの会社でもやってないモノを作りたいという思いが、デザイン性の高い展示会用のディスプレーや看板を作ることに繋がりました。今でも梱包材は作っていますが約4割。ディスプレーや看板などが6割を占めるまでになりました」 「発泡スチロールだからこそ出来る世界があるんですよ。金属や木工のように頑丈なモノはできませんが、可能性は無限にあります。2次元のデザイン画から、3D造形にすることも出来ます。こんなモノ作って欲しいという要望があれば、できるだけお応えしたいです」と、工場を回りながら発泡スチロールの可能性を語る。こんな時の社長は、より一層輝いている。 次の3枚の写真は工場内に置いてある未完成作品。発泡スチロールの椅子に座っても大丈夫だろうかと心配になるが、強度を保つために特殊な塗料をコーティングをするそうだ。
なにはともあれ、製品を見ていただくのがいちばんだ。これまで納品したモノから6点をご覧いただきたい。「これが発泡スチロールで出来ているの」とびっくりする。その場にふさわしいデザインやディスプレーは、社長はじめ従業員のセンス満載!楽しさ満載!
大がかりなものでなくても、家庭で使うちょっとしたモノの注文にも応じている。「こんなモノがあったらいいなという希望を気軽に持ち込んで欲しい」と言っている。 インタビューの最後に聞いてみた。「安定した会社を辞めて後悔していませんか」 「もともと惰性で仕事をするのが嫌なんです。常に新しいアイディアを考えているので、やりがいがあります。緊張感も刺激になります。定年もありませんし」と即答してくれた。 ワクワクビックリの製品を見せてもらったうえに、発泡スチロールの無限の可能性を聞かせてもらった。レポーター冥利に尽きる至福の時間を過ごすことが出来た。 (2015年6月訪問 HARUKO記) |