外観都筑区茅ケ崎東4丁目にあるアサヒタクシー(株)港北ニュータウン営業所(左)を訪問してきた。

副所長の玉川悟さんから「その日は、僕ひとりしかいませんので、電話がかかってきた場合には、ごめいわくをおかけしますが」と、前もって言われてあった。


たしかに、配車を希望する電話が時々かかってきた。でも、その応対を見聞きしたことで、便利なシステムを知ることになり、参考になった。


タクシー業界の移り変わり


アサヒタクシーの創業は、昭和27(1952)年。日本全体の自動車台数は極端に少なく、マイカーはほとんど普及していなかった頃だ。ここ都筑の地に営業所を開いたのは、平成15(2003)年。ほぼ10年になる。タクシー16台、乗務員38名と、規模は大きくないが、地域にしっかりと根付いている。

子育てタクシー都筑区には、子育て世代がたくさん住んでいる。アサヒタクシーを取材したいと思ったのは、「子育てタクシー」を運行(左)していると聞いたからだ。でも玉川さんが真っ先に話し出したのは、タクシー業界の移り変わりだった。

「タクシーは電車やバスに比べ安い乗り物ではありません。にもかかわらず、お客さんがタクシーを探す時代がありました。ドライバーが『降りろ』と言えば、従わざるを得ない状態でした。でも今は、そんな態度をとったら、やっていけません」と玉川さん。

「利用者からみると、たしかにドライバーの態度がよくなっていますね。タクシー業界が厳しい立場になった原因はなんでしょうか」

「バブル時代には、残業にも接待にもタクシーが使われました、でも、不景気になると真っ先に削られるのがタクシーです。規制緩和も大きいですね。参入できる条件が緩和されたことで、会社が増えました。今はお客様第一でないと、やっていけない時代になったのです」


 子育てタクシー


子ども港北ニュータウン営業所は、タクシー業界の変化に加え、地下鉄グリーンラインが開通したことで、売り上げが急に減ったそうだ。「お客様が欲しているサービスってなんだろう」と考えた末に、平成21(2009)年7月に子育てタクシーをスタートさせた。

子育てタクシーは、平成16(2004)年に香川県ではじまった。平成18(2006)年には全国子育て協会を設立するなど、全国的な組織になっている。

横浜市でこの協会に加入しているのは、アサヒタクシーの山手・港北営業所以外に、サンタクシー(港北区全域)、東宝タクシー(鶴見区・神奈川区東部)、三ツ境交通(瀬谷区・旭区中西部)。横浜市全体でみると、配車可能のエリアは半分程度だが、都筑区の場合はどこでもOKだ。

ひよこコースアサヒタクシーの場合は、かんがるーコース(ベビーカーや荷物の乗せおろしを手伝う)、ひよこコース(子ども1人での移動を手伝う)、ふくろうコース(夜間救急病院などの送迎を手伝う)と、急な陣痛に備えての陣痛119番もある。初めての要望でも応じることができるが、あらかじめ登録してあると、応対がスムーズにいく。

子どもだけで乗車できる「ひよこコース」(左)は、働くママには好評だ。たとえば、保育園から塾への移動にも利用できる。

子育てタクシーに乗る乗務員は、あらかじめ研修を受けて、認定された人たちばかりだ。チャイルドシートの着装や緊急時での対応はもちろん、子育てでストレスがたまっている母親が、リラックスできるような接客も心がけている。

ちなみに、子育てタクシーの料金は、通常の料金と変わらない。


デジタル無線 


無線配車希望の電話を受けている様子を見せてもらった(左)。電話がかかってくると同時に、事前登録者や一度電話を受けた人の場合は、その住所に旗のマークがつく。

旗マークに近い場所にいるタクシーの順番が出る。そこに自動的に無線が飛び、配車の場所までコースも示される。だからドライバーは、道に迷うことなく、時間もほぼ正確に着くことができる。

アサヒタクシーの場合は、2年ほど前にデジタル無線を導入した。これによってスムーズに配車できるようになり、客からの苦情も減った。

「今はこのシステムを導入していない会社はないと思いますよ。ナビをつけてないタクシーもほとんんどありません」と玉川さん。

「本来の仕事の内容は変わらなくても、便利なシステムが導入されることで、仕事の質は変わっていくのだなあ」と、会社訪問のたびに思う。タクシー業界は今後、どのように変化し発展していくのだろうか?

                            (2012年3月訪問 HARUKO記)


地域の企業・施設訪問のトップページへ
つづき交流ステーションのトップページへ
ご意見や感想をお寄せ下さい