藤澤さん「次は女性を訪問したいんです。農業関係者でもPTA関係者でもない、女の方のお知り合いはいませんか」と、3回目訪問の栗原泰光さんに頼んだ。

中川小PTAOB会会長で野菜作りが本業の栗原さんには、無理なお願いかと思ったが、すぐに紹介してくれた”ひと”が、藤澤惠子さん(左)。

栗原さんが週に1度通っている太極拳サークル「都筑無限太極会」を立ち上げた方である。

太極拳の会を立ち上げた理由は、彼女の本業エステティシャンとも関わってくる。太極拳ともエステとも無縁な生活をしている私には、少し荷が重い。

場違いにならないことを祈りながら、中川駅近くにある個人サロンにお邪魔した。良い香りと藤澤さんの笑顔が迎えてくれたのでホッとした。


   無理なく健康になりたい

「太極拳の会を立ち上げたのはなぜですか」「みんなが、無理なく健康になったらいいなという思いからなんです」と藤澤さん。

「ある日、ご主人の心身の不調を心配された奥様の薦めで来店された30歳後半の男性がいらっしゃいました。そのときに、無理なく自力で健康になるきっかけになればと、私が以前からやっていた太極拳を思いつきました。体系的にしっかり指導してくれる全日本太極拳研究所の所長に来てもらい、会を立ち上げました」。

太極拳こうして都筑無限太極会は2002年にスタート。中川西中学校の格技室で、毎週木曜の夜6時45分から2時間やっている(左)。

夜の時間を選んだのは、ストレスが溜まりやすい仕事を持っている方が参加しやすいからだが、発足当初は人数も少なく男性は2人だけだった。最近は男性と女性のメンバーが半々になり、年齢層も30代から70代と幅広くなった。

「2時間も太極拳をしていたら飽きませんか」。

「最初は練功18法という準備体操をします。身体に関する講話の後、静気功を10分くらい。そして太極拳の基礎練習と24式をやり、キャリアに分かれて48式と24式をします。次は全員で32式剣の練習。最後は整理体操。これだけすると2時間はあっという間で、飽きないですよ」と、はじめて聞く専門用語の解説も交えながら、身振り手振りで説明してくれた。

中国旅行で、太極拳をしている人たちを何度も見たことがあるが、私が目にするのは年寄りが多かった。高齢者向けの体操というイメージを持っていたが、ゆっくりの動作とは裏腹に、2時間後にはみなさん汗びっしょりとのことだ。

都筑区には、公共のスポーツセンターや公園もあるし、民間のジムも林立している。スポーツの種類も多様化している。そんな中で、中国で生まれた太極拳がこうして都筑の地に根付いていることを知った。


    20代のころから自分の店を持ちたかった

藤澤さんの出身地は、岩手県の陸中海岸に近い町。学校を卒業後、某大手化粧品会社の盛岡営業所に8年間勤めた。その間、美容部員からアドバイザーという指導と育成をする役職も経験し、岩手全域を出張で回っていた。

メイクアップの実演中でもメイクアップが得意で、メーカー主宰の全国大会コンテストで2年連続で入賞した。左は全国大会で2位になった時のメイクを、社員研修で再現している写真。

「でもこの仕事をしていくうちに、いつかは自分の店を持ちたい、独立開業したい、と思い始めたんです。まだ20代の時です。当時はメイクアップアーティストのトップはほとんどが男性でしたので、女性に開かれた道として、エステティックを選びました」

でも、藤澤さんが独立したいと考えた20年前は、エステの資格を取得できる学校は岩手にはなく、東京でもそれほど多くなかった。

エステアカデミー卒業認定書「安定した会社をやめて上京するなんて、と両親には反対され1度は諦めかけたのですが、1年がかりで説得しました。会社を退職して、銀座にあったフランス・ジャン・デストレエステティックアカデミー日本校に入学しました」と語る。

左は、ジャン・デストレエステアカデミー1988年卒業のディプロマ認定書。

その後、ジャンデストレのフランチャイズチェーンの新規店立ち上げに関わることになった。東京の「麻布十番店」や横浜の「たまプラーザ店」で店長を5年、最後の1年は都内3店舗のマネージャー職を兼任して、計6年間勤めた。


   15年前に都筑区に自分の店を持った!

「自分の店を持ちたい」夢が実現したのは1995年。美容分野のエステティックだけでなく「心身の癒しと健康」をテーマにしたトータルビューティサロン「ハマシオン」を開業した

エステ業界に6年勤めた経験から、集客の方法や必要な設備や物品の仕入れ法は分かっていた。ただ女性1人の為、希望のサロン物件を探して借りるまでは苦労したという。

エステフェイシャル 個室
エステフェイシャル中の様子。 個室は2つあるが、そのひとつ。心地よい空間を心がけている。

仕事をしている時は見学できないので、聞いた話を伝えるしかないのだが、フランス式アロマテラピー・中国陰陽説の応用アロマテラピー・光線治療・フラワーセラピー・波動療法などいろいろなやりかたで、肉体と心の両面から美を追究している。

藤澤さんがユニークなのは、サロン事業をしたい人向けのスクールを開いていることだ。2002年から、技術や知識を習得して独立・自立したい人を応援するサロンアカデミーの活動も行っている。

最後に少し聞きにくい質問をぶつけてみた。「大変な不況の時代ですが、お客様が減ることはありませんか」。

「エステティックは贅沢なものという消費者意識はまだありますし、不況の影響が全くないわけではありません。ただ、個人サロンは、担当者が変わらないので、お客様との信頼関係で成り立っています。実際、この数年は女性の自立や独立志向も高まったせいか、個人サロンはむしろ増えています。そんな女性たちの役に立つような活動にも、今後は力を入れたいと思っています」と心強い答えが返ってきた。

女性が独立していきいきと仕事をしている姿を見るのは、同じ女性として勇気をもらえると同時に、嬉しいことだった。


    つぎの訪問は内科医の粕谷奈都子さん   

藤澤さんが紹介してくれた次の”ひと”は、ホームドクターとして信頼を寄せている内科医の粕谷奈都子さん。粕谷さんが開業しているクリニックと、サロンが近いことからのご縁である。医学の現状について、いろいろ聞きたいと思っている。
                                          (2010年2月訪問 HARUKO記)

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