都筑区荏田東にある心行寺(左)で、2月6日に44回涅槃会(ねはんえ)が行われると聞き、行ってきた。

仏教の世界では、お釈迦様の誕生日(花祭・降誕会−4月8日-)と、悟りを開いた日(成道会−12月8日−)、入滅した日(涅槃会−2月15日−)を三仏忌と言うのだそうだ。

花祭は、去年の4月に大善寺の花祭を取材したばかりだ。でも入滅した日の涅槃会は知らなかった。行かずばなるまい。

この寺は都筑区の中心駅「センター南駅」から徒歩7分と交通も便利だ。区役所や病院の裏手に位置している。



それにも関わらす、境内は広く、木々が茂っていて深山幽谷の言葉が大げさには聞こえない。檀家さんばかりか、季節ごとの花や緑に惹かれて訪れる人も多い。特に紅葉はお勧め。

心行寺は、新編武蔵風土記にも「荏田村渋沢谷にあり。江戸芝増上寺の末寺なり。開山相誉(そうよ)、慶長19年化す・・」と載っている。これから推測すると、約400年前の開山ということになる。

左写真は本堂への階段。



 


心行寺の安田住職に取材の許可を得るために連絡をとった。左は涅槃会の記念撮影での住職。

「涅槃会は44回にもなるんですね。都筑に長いこと住んでいるのに知りませんでした」

ご存じないのは無理もありません。心行寺でやるのは初めてだし、主催者ではないんです。横浜市の仏教連合会が中心になって、各区が順番でやっています。今年が都筑区の当番だったので、境内が広いし駅から近いということで、指名してくださったのです」

「仏教会もいろいろな組織があるんですね」

「神奈川県仏教会が成道会を、横浜市仏教連合会が涅槃会を、各区の仏教会が花祭の法要をしています。持ち回りでやることで、結束を高める良い機会になっているんです」

ちなみに、横浜仏教会に属している寺は436寺もある。都筑区では31寺が所属している。
都筑区の寺については、交流ステーションで取材しているので、これも併せてごらんいただきたい。


 


心行寺の涅槃図は、縦270センチ、横160センチの絹地に肉筆で描かれたもの。軸心には「延宝7(1679)年2月12日、11世弁誉保残(べんよほざん)和尚時代に、芝・田町・札乃辻・表具師庄兵衛」という記録がある。

普段は公開していないので、この時に拝見できてラッキーだった。

左は、お釈迦さまが沙羅双樹のもとで亡くなった時の様子。大きな涅槃図の一部だが、弟子達はもちろん、鳥や虫までも嘆き悲しんでいる。なお涅槃図の絵解きは心行寺のHPに載っているので興味のある方は次をクリック。
https://www.shingyouji-yokohama.or.jp/


左は法要のために入堂する導師たち。会場は、荘厳な雰囲気に包まれる。

横浜市仏教連合会会長の山本師の表白文の奉読に続き、参会者全員でお経を唱えた。振り仮名がついている経本を貸してくれたので、なんとか唱和できた。正直に言うと意味はよくわからない。

後で、花祭の取材で顔なじみの大善寺の石川住職に「花祭の時と涅槃会の時では、お経の内容が違うんでしょうか」と聞いてみた。

お経は宗派による違いもありますし、花祭と涅槃会で極端な違いはないと思います」と答えてくれた。

仏教会の会長さんたちの話で印象に残ったのは、次の話だった。「お釈迦さまは生まれ故郷に帰る途中、純陀という人が布施として差し上げたキノコの中毒でクシナガラの沙羅双樹の下でお亡くなりになったのです。純陀は責められる立場ですが、お釈迦様は慈悲の心でお許しになり、おおいに功徳があると思いなさいと弟子たちに言い残しました。紀元前383年2月15日のことです

会場には、立ち見が出るほど大勢の人が詰めかけ、法要や講演に聞き入っていた。檀家や信者ばかりでなく、私のような部外者もいたと思うが、なんといっても仏教は日本人の生活や習慣に溶け込んでいる。違和感なくお坊さんのお説教が耳に入ってきたのは、そのせいかもしれない。


 


この日のクライマックスは、光誉祐華(こうよゆうか)師による仏教伝道ライブだった。奈良県の吉野にある浄土宗西迎寺の副住職。黒い袈裟を着ていなければ、僧侶とは想像すらできない。

おおかたの日本人は、お寺は仏事の時しか行かない。仏教の教えを知る人も少なくなくなっている。西迎寺の娘に生まれた光誉祐華さんは、 仏教大学で学ぶかたわら、歌手になりたいとボイストレーニングにも励んできた。

「仏さまの教えを、みんなに知ってもらいたい。若者と仏さまの縁を結ぶ架け橋になりたい」と、平成19(2007)年から仏教伝道ライブを始めた。「愛$菩薩(あいどるぼさつ)」と言う名前で、ライブハウスにも出演している。



歌の合間には法話 

 
仏教の教えに基づいたオリジナル曲の熱唱

彼女の法話は、「つらい時でも仏さまは、常に寄り添ってくれています」など、具体的で分かりやすかった。すべての僧侶の説教がこういう調子だったら、仏教に親しみを持つ人が増えるに違いない。

中学校で話すこともあるという。「中学生の感想でいちばん多かったのは、殺生が悪いとは思わなかったなんです。蟻などはみな平気で殺しますが、殺さない方法はいくらでもあります。飴をどこかに置いたら、自然にそっちに行きますから」と光誉さんは話す。

他に身近な人の死にあった時の心の持ち方や、自業自得の意味などをしんみりと語ってくれた。合間に「ナンマイダー」の掛け合いや歌も入り、厳かさと楽しさを同時に感じるひとときだった。

横浜市仏教連合会副会長の佐藤師は「最近の仏教は身近なものではなくなっています。でも光誉祐華師の法話で仏教に関心を持ってくれる人も多くなるでしょう。これからの仏教は、こういう伝道も参考にしなければならない」と閉式の言葉を述べた。その通りだわと思いながら、心行寺を後にした。

                               (2019年2月  HARUKO記)

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