オンワード外観20回目の今回は、オンワード総合研究所(左)をレポーター3名で訪問してきた。都筑区牛久保3丁目、区内北端の高台に位置する。

(株)オンワード樫山の本社は、東京の日本橋にある。言うまでもなく、紳士服・婦人服・子供服・きもの・服飾雑貨などを扱っているアパレルメーカーのトップである。

オンワードの社名を知らなくても、メンズの「J.PRESS」「五大陸」「23区」「DKNY]や、レディスの「23区」「自由区」「組曲」「ckカルバンクライン」のブランドは、よく目にしていると思う。

1927(昭和2)年に樫山商店として創業し、今の社名になったのは、1988(昭和63)年。「オンワード」は、創業者の樫山氏が三越に勤務していた時代、三越の少年音楽隊が演奏していた賛美歌379番”Onward Christian Soldier”がずっと心に残っていて、昭和26年に商標登録したことに由来する。

対応してくださったのは、総合研究所品質管理部の井上さん、総合研究所事務長の清藤さん、本社広報課の藤原さん。3人とも、上から下までビシッと決まっている。さすがアパレルメーカーの社員だと、初っ端から感心してしまった。


内部はまるで美術館

総合研究所は、1991(平成3)年に開所した。建物は、技術開発センターの研究棟と、人材開発センターの研修棟に大別される

エントランス内部は、研究所というイメージとは違い、ゆったりとした空間を保ち、しかも洒落ている。総合研究所を設立するときに、リラクゼーションを追求しただけのことはある。

エントランス(左)には、大きな絵画(宮崎未子作)が左右に飾ってある。他にも館内の各所に、およそ22点の絵画・版画・リトグラフ(ミロ作とビュッフェ作)・陶板・コラージュが展示してあり、まるで美術館にいるようだ。



サンルーム研究棟と研修棟を結ぶ廊下(左)は、天井・壁ともガラスで覆われてサンルームになっている。内外の樹木が目に優しい。椅子が置いてあるので、ここでゆったり過ごすこともできる。





良い生地のためにさまざまな試験をしている

化学実験伸縮実験技術開発センター内部は、品質管理部の井上さんが、説明してくださった。化学実験室(右)では、生地の薬品検査などを行っている。

恒温恒湿室は、標準環境条件である温度20度、湿度65%に保たれている。その中で、生地の引帳・引裂・摩擦・剥離・破裂強度や、伸長回復性・シワ回復性など、さまざまな実験を行っている。

左写真は、生地を伸ばして縮める実験をしているところ。連結しているコンピュータに、その結果が即座にグラフに現れる。こうして、繊維の強度を測っている。

アパレルメーカーというと、どうしても華やかなファッションを思い浮かべるが、風合いが良く仕立て栄えの良い生地は、地味な作業の積み重ねで生まれるのだ。こうした地味な部門があることを、迂闊にも知らなかったので、新鮮な驚きだった。




クレームは次の製品の手がかりに

クレーム万全の品質管理のもとで製品化しても、変色した、伸びた、縮んだ・・などのクレームはある。洋服の裏に、メーカーの連絡先が書いてあるので、直接電話をかけてもいいし、買った店に持ち込んでもいい。

左写真は、クレームで持ち込まれた衣類。オンワードでは、クレームは次の製品の手がかりになるとして、各人に丁寧に対応している。恒温恒湿室で再現試験を行い、その結果を報告している。



ファッションを科学する

総合研究所内部には、技術センター以外に、オンワード先端技術研究所がある。衣料関連業界を代表する会社が、共同で新素材などの研究開発に励んでいる。参加企業は、繊維・染色・裏地・芯地・ミシンなどの11社。1991年の設立後、たくさんの新素材・新商品が製品化された。

ウオータートリートメント先端技術の研究ということで内部の見学は出来なかったが、WT洗濯機、乾燥機、仕上げ機の写真(左)を提供してもらった。ここで、水系洗濯商品の量産化前検証・研究をしている。WTはウオータートリートメントのこと。

先の11社に、クリーニング業・洗剤メーカー・家電メーカーなど21社が加わり、WT研究会を作り、「水系洗濯の基準」作りを検証・研究している。

成果として、1999年夏に「五大陸」ブランドで「エコ・Jスーツ(商業水洗い対応スーツ)」を製品化し、「99年日経優秀製品・サービス賞優秀賞」を受賞した。


研修室や宿泊施設

訪問するまで知らなかったのだが、ここには、人材開発センターが担当している研修室や宿泊施設やレストランがある。事務長の清藤さんが案内してくださった。

会議室400名収容の大ホール・大中小の研修室・80室の宿泊施設がある。左写真の会議室は、映像音響設備が整っている。

これら施設は、一般にも開放しているので、他企業の研修にも使われるという。

もちろん近隣の個人の方でも利用できる。清藤さんは「どうぞ気軽に使ってください」と言っていた。特に80室ある宿泊室は、区内にはホテルが少ないこともあり、客を自宅に泊めきれない場合には、便利だと思う。トリプルで1泊6,500円(食事なし)。宿泊者は、レストラン・バー・ジム・麻雀室・25メートル温水プールも使うことが出来る。設備も一流ホテル並みに整っているし快適だ。 横浜国際プールで大会があった時に、某有名選手とスタッフが泊まったこともある。朝、ジムやプールを使い、会場に通ったそうだ。

ちなみに宿泊施設は、災害時に、要介護の方の一時避難場所として区と協定を結んでいる。今まで大きな災害がなかったので、利用されたことはない。

バーラウンジレストランやバーラウンジ(左)は、宿泊者はもちろんだが、4人以上で予約すれば使うことができる。

 最近はレストランウェディングの問い合わせも増えてきているそうだ。訪れた日も、幼稚園のお母さんたちのパーティーの準備がしてあった。

16年も前から都筑に居を構えている研究所なのに、訪問するまで、何をやっているのか、内部がどうなっているのかまったく知らなかった。施設を一般人でも利用できることを知ったこともだが、それ以上に、自社製品に対する品質管理をきちんとしていることに感動した。一流企業の姿勢を見せてもらったような気がする。
(2007年3月訪問 HARUKO記)
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