都筑区勝田町1044にある株式会社横浜環境デザイン(左)を、3人で訪問してきた。

社名だけを聞くと、具体的に何をしているか分かりづらいが、太陽光発電システムの設計・施工・販売をしている会社である。「住まいのエコ環境をデザインする」の思いを社名に込めたという。

私は、太陽光発電の言葉は聞いたことがあるが、原理についてはまったく分かっていなかった。屋根に載せている太陽熱温水器と同じようなものかと誤解すらしていた。

そんな私にとって、IT専門家のSさんや東京都市大の環境情報学部学生Kさんの若い2人の区民レポーターが同行してくれたのは、心強かった

約束の2時間をだいぶオーバーしてしまったが、社長は嫌な顔もせずに、太陽の光が電気になる仕組み、会社設立の頃の苦労話、会社の理念や今後の展望などを、分かりやすくそして熱く語ってくれた。

元気がないと言われ続けている日本に、パワフルで若い経営者がいることに、頼もしさをおぼえた取材でもあった。


   福田ビジョンが追い風になった

池田真樹社長(左)は、1人で1998年7月に大和市で創業した。大和からここ都筑に移転したのは2003年。地主との縁もあったし、若い人がたくさん住んでいる地域なので、市場として有利に思えたからだ。

最初から創業者だったのではない。電気工学専攻後に入社した大手自動車メーカーでの仕事は、自分には合わないような気がしていた。

そんなときに、京セラが住宅用太陽光発電の販売を開始、工事業者を求めていた。専攻した電気工学を生かせる仕事だし、在学当時からソーラー発電に興味を持っていた。大学には、企業と共同でソーラーカーを開発している部門もあった。

自動車メーカーに3年半在籍後に、独立した。しかし独立当初は、仕事がなくて苦戦。「今思うと、福田ビジョンが、わが社にスイッチを入れてくれたようなものです」と池田さん。

「福田ビジョンってなんですか」「2008年7月の洞爺湖サミットは環境サミットと言われたのですが、当時の福田首相が低炭素社会を目指すビジョンを宣言しました。太陽光発電世界一の座(7〜8年前は日本が世界一、洞爺湖サミットのころはドイツが世界一)を奪還するために、補助金を増やす案を出したのです」。

たまたま取材翌日10月23日の朝日新聞に「今年に入り太陽光発電システムの住宅への設置が急速に拡大している。4月〜6月の住宅向け太陽電池の出荷は前年同期の2.3倍になった。・・・電力会社の買い取り価格を1キロワット時あたり24円から48円へ倍増。さらに自治体からの補助金もあり設置コストをより早く消却できるようになった。・・・」の記事が載った。

太陽光発電の話を聞いたばかりだからこそ目に留まったのだが、横浜環境デザイン(以後、会社のロゴにもなっているYKDと記す)は、ますます忙しくなるだろうなと思いながら、この記事を読んだ。

当日見学した倉庫には、たくさんのパネルが積み重なっていた。「こんなにたくさんのパネルを保存しておくのですか」。

「いやあこの荷は、2〜3日で無くなってしまいます」の社長の言葉どおり、仕事は順調のようだ。


     太陽光発電ってなに?

現在は新築の家の56%が太陽光発電システムを取り入れている。2020年には70%まで引き上げようという政府の目標も夢ではない。

太陽光発電を使っている家は、屋根を見ると分かる。瓦と一体になっているのであまり目立たないが、薄いパネルが敷いてある。

今は全戸数の3%ぐらいしか設置していないから、探すのは難しいかもしれない。でも新築住宅の屋根の半分以上に、パネルがついてるはずだ。左写真は、YKD社屋の屋根についているパネル。

水力発電・火力発電・原子力発電・風力発電は聞き慣れている。それぞれのエネルギーで電気を作っていて、発電所を見学したこともある。でも太陽光発電所があるなど聞いたこともない。

ていねいな説明を聞いてやっと分かったのだが、大規模な発電所は必要ないのだという。

なぜ太陽光発電で日本が世界一になれたのか−編集NEDOBOOKS−2007年発行」の中に、太陽電池の原理がわかるイラスト(左)があった。

太陽電池に光があたると、マイナスはn型シリコンへ、プラスはp型シリコンへ集まる。電気が作られる仕組みということでは、小学校の時に習った乾電池と同じ理屈だ。

このように、シリコン入りのガラスの板に太陽光があたると、電気が流れる。ガラス板の厚さはわずか数ミリだ。発電するために熱を出すこともなく、騒音を出すこともない。今までの発電所に比べ、なんとシンプルなのだろうと、驚きかつ感心してしまった。

だから太陽電池のパネルさえあれば、電気が通っていない砂漠や僻地でも、電気製品を使うことができる。たとえば、ゲル(移動式テント型住居)を使っているモンゴルの遊牧民でも、このパネルがあれば、電灯がつきテレビが見られる。コスト面が解決できれば、夢のような装置だ。

ソーラー発電は、地域や季節によって発電電力量が変わる。素人考えだと、熱帯地方のように年がら年中太陽が照りつける地域ほど、発電量が多いように思うが、そうではない。外気温度が25度を超えると性能が落ちる。

日本で言えば、長野県佐久市の条件がいちばんいい。冬は晴天続きで気温が低いからだ。意外なことに、横浜の発電量は、北海道の帯広と同じ。横浜住人からすると「帯広は雪が多くて寒そう」の印象だが、横浜と帯広の晴れの日はほとんど同じという。


  発電貯金がたまる

「太陽光発電をを設置することのいちばんのメリットは、自然エネルギーを使っていることで地球の環境を守っているんだという家族全員の意識かもしれません」と池田さんは語る。

光熱費が安くなる余った電力を電力会社が買い取るので、○○年で設置費用は消却できる・・と宣伝しているが、経済面だけで設置するとイライラするかもしれない。

お客さんの中には、家族みんなが楽しみながら節電につとめ、一般的な消却期間の半分で達成した方もいる。自分の家で発電した電気が余った場合は、自動的に電力会社(横浜なら東京電力)に流れる仕組み。上記の新聞記事にもあるように、電力会社の買い取り値段が、2009年から、1キロワットあたり24円から48円に倍増した。

これを買電(電気を買う)と言うが、YKDでは発電貯金と呼んでいる。電力会社が、預金口座にお金を振り込んでくれるからだ。他の通帳と区別して発電貯金を楽しんでいる方もたくさんいる。

左のグラフは、「晴れた日の1日の電力の推移」で東京地区の5月の例を示している。(京セラのパンフレットより)。

このグラフでは朝の6時から夕方の4時までは、発電電力が消費電力を上回っている。しかし太陽が出ない夜は、消費電力が上回る。私たちの生活スタイルや、太陽光のことを考えるととても分かりやすい。

日中に余った電力は、電力会社に自動的に流れ、足りないときは電力会社から自動的に流れてくる。


とはいえ、毎日こんなに順調なわけではない。訪問した日は、今にも降り出しそうな曇り日だった。

左写真は、京セラのエコノナビットというソーラー発電のモニタである。

取材のときに、社長が机の前に置いて説明してくれた。持ち運びも簡単なのだ。

11時48分というもっとも太陽光が強い時刻にかかわらず、発電量は1.2キロワット、消費電力は3.3キロワットと、消費電力が上回っている。

晴天の日に訪問すれば、この値は逆転していたはずだ。もういちど訪ねて逆転の数字を見てみたい。


    外務省にも設置

日本で太陽光発電のパネルを作っている会社はたくさんあるが、現在のシェアは1位がシャープ、2位が京セラ、3位がサンヨーである。YKDの場合は、もともと京セラのフランチャイズ店として始まったこともあり、京セラやサンヨー製品を使うことが多い。でもお客さんの要望があれば、他の会社の製品を使うこともある。

個人のお宅はもちろん、自治会館や学校など公的な施設への設置も多い。

公的な施設には横浜市や国が補助金を出している。特に小中学校に対しては、麻生元首相がスクールニューディール政策をかかがげて以来、国から97.5%もの補助金を出しているそうだ。左は横浜市のフェリス女学院への設置。

当然ながら、霞ヶ関の政府の官公庁の建物には、すべて設置してある。YKDでも外務省などいくつかを担当した。外務省の屋根や壁の写真を撮ることは防衛上でもふさわしくない。残念ながら写真はないが、霞ヶ関に行ったら、屋根を観察したら面白いかもしれない。


今回の取材は、50回の区切りとして総集編を書いたのちの初の取材だったが、新しい時代を感じさせ、希望がわいてくる訪問になった。 (2010年10月訪問 HARUKO記)

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