主に朝日新聞を販売しているASA港北ニュータウン都筑(左下)を訪問してきた。都筑区北山田3丁目に店舗を構えている。

港北ニュータウン店都筑の外観川端さんんと阿部さん店長の川端さんと、ミニコミ誌「ASA定食」を編集している阿部さんが、仕事の合間に取材に応じてくださった(右)。

その間にも、来客や電話がひんぱんにあり、店舗の活気に驚いてしまった。

ここの経営者は、他に相模原市に2店、港北区の高田に1店、計4店舗を所有している。中でも「港北ニュータウン都筑」は、神奈川県でいちばん規模が大きい。写真の左側にも作業所があり、奥行きもある。


販売店は自分では選べない      

都筑区には、経営者が異なる朝日新聞の販売店が他に3つある。「港北ニュータウン都筑」は、すみれが丘・北山田・南山田・南山田町・大棚町・大棚西・中川町・中川中央・東山田・牛久保東など、主に区の北部地域を担当。便宜上、ここを18の地区に分けている。

北部にあっても他の販売店が担当している町もあるし、同じ町でも番地によって販売店が違うこともある。この店の配達エリアを詳しく知りたい方は、HPを見て欲しい。


   小学生新聞の部数は、日本でも1〜2を争う

朝日新聞以外に、東京新聞・神奈川新聞・日刊スポーツ・デイリースポーツ・株式新聞・農業新聞も扱っている。ヘラルドトリビューン朝日やジャパンタイムズなど、英字新聞を購読している人もいる。

朝日小学生新聞小学生向けの「朝日小学生新聞」(左)の購読者は、日本でも1〜2を争う。店長は「区内に子どもが多く、しかも教育熱心な親が多いからではないか」と話していた。

小学生新聞が1〜2を争うだけでなく、配達部数は毎年増えている。36ヶ月以上続けて購読している読者も多い。配達部数が増加したことで、去年は朝日新聞社から優秀賞をもらった。

配達部数は、朝刊がおよそ5,600部、夕刊は3,600部。朝刊だけを取っている単身者や事業所が多い駅周辺では、夕刊配達は極端に減るそうだ。


     朝2時半に出社

朝刊は21人、夕刊は18人で配っている。配達員の1日を追ってみた。

★2時半→出社

★2時40分頃→座間市にある印刷工場から新聞が届く。
朝刊記事の締め切りは、夜中の0時ぐらい。もちろん突発事件が起きれば、遅らすこともある。印刷が終わる2時頃に、座間工場をトラックで出発。数カ所の販売店を経て、2時40分頃に都筑店に到着する。

★3時半→前日の午後にひとつにまとめたチラシを、新聞に挟んだ後に出発。
ひとりで、およそ300軒を受け持ち、2時間から2時間半かけて配達する。セキュリティが厳しいマンションは、勝手に階上まで行けないので、集合ポストに入れているが、読者のことを考えると戸別に配達したい。配達の時間だけでも中に入れるように、交渉している。

★6時頃→近くにある社員寮(家族寮もある)に戻り、休憩する。

★14時→再出社
再出社後、夕刊配達までの時間も忙しい。集金・客の要望を聞くなど、仕事はたくさんある。

★夕刊記事の締め切りは13時。朝刊と同じような流れで配達し終わるのは17時頃。その後も営業活動などで忙しく、配達員が退社するのは20時半頃になる。

印刷工場から新聞到着 チラシを新聞に挟む作業 オートバイで配達に出発
座間の印刷工場から、真新しい新聞が到着 折り込みのチラシを新聞に挟む。 オートバイで配達に出発!この日は晴れていたので軽装備。


都筑区の家庭に配達される朝刊は13版と14版が交じっているが、ニュース性が少ないほど13版、つまり早い時刻の印刷になっていることにお気づきだろうか。トップ頁は14版夕刊は3版と4版が交じっていて、トップ頁は4版。同じ横浜でも、他区のトップ頁の版が、都筑区と違っている場合がある。

版の違いを聞いてみた。「夕刊で言えば、2版や3版は駅売りの新聞です。印刷工場から離れた地区は、家庭に配られるのも3版です」。「以前、配達の新聞が足りなくなったので、駅に買いに行ったら、内容が違って困りました」。川端さんが新聞奨学生だった頃の話である。ちなみに、今は新聞奨学生は減っている。

紙面は、高速デジタル回線で国内や海外の印刷工場に送られる。紙面を焼き付けたアルミニウム板を輪転機に取り付けるオフセット印刷は、非常に速く印刷できる。20頁の夕刊の場合は、1分間に約3,000部も刷り上がるという。

このような送信技術や印刷技術の向上で、早い時刻に印刷する必要がなくなった。1版など早い番号の版がなくなったのは、このためである。


   チラシ折り込み機

都筑区は若い住民が多く、購買意欲が大きいこともあって、チラシ広告の枚数が非常に多い。週末は、70種類を超えることもある。

以前は1枚ずつ手で折っていたが、今は便利な機械が、24枚まで1束にしてくれる。70枚ある場合は機械を3回動かす。

3束をひとつにまとめるのは手作業だ。訪問した2時半ころは、パートの主婦や配達員が総出で、翌朝の朝刊に入れるチラシの束作りに精を出していた。

チラシをまとめる機械 チラシの山 ビニール袋で新聞を包む機械
チラシ24枚を1束にできる機械 束になったチラシの ビニール袋で新聞を包む機械

雨が降っているときの配達員の苦労は大変だなと常々感じていたが、新聞を濡らさないための事前の準備も怠らない。

インクの香りがする真新しい紙面を開くのは楽しみなものだ。以前は濡れた新聞が届き、インクの香りどころか、シミになっていたこともあったが、最近はそんなことがない。この店にはビニール袋で新聞を包む機械が5台ある。全自動ではなく一部は手作業なので、5台も必要なのだ。

天気予報を見て、30%以上の降水確率のときは、その時点で降っていなくてもビニール袋に入れる。「雨が降っていないのに包んである。おかしいな」と思ったことがあるが、万一に備えてのことだったのだ。この心遣いに感激してしまった。


   地域と密着

この地域ということではないが、新聞配達員がらみの事件・事故が以前は多かった。この汚名を返上しようと、従業員みんなが、さまざまな事に取り組んできた。上からの命令ではなく、従業員が自ら、アイディアを出すようになった。「配達員のノーヘル(ヘルメットを被らない)と、くわえタバコがなくなり、挨拶も出来るようになったんですよ」と、店長は嬉しそうだ。

○午前午後2回の映画会を、年に3回都筑公会堂で開催している。すべてスタッフが手がける手作り映画会だ。最近では8月22日に、「ライアンを探せ!」を上映し、喜ばれた。入場は無料。

○毎月20日に発行される「ASA定食」には、「街の声」と称する読者から寄せられる身近な情報や、チケットのプレゼント、古紙回収の予定などが載っている。チケットのプレゼントは毎回30種類ほどあるが、特にシネマや歌舞伎の券に人気が集まる。有名な美術展のチケットも人気の的だ。2日間で、350〜400の応募があるという。

回収した新聞は業者に渡してしまうので、トイレットペーパーはこの店が出している。新聞を読み終わった後まで、責任を持ちたいと考えているからだ。

ASAあさ市も月に1回開いている。朝日農業賞を受賞した新潟の神林カントリー農園の野菜と餅の直売をしている。新潟からなので、朝ではなく午後1時から開催。新鮮で安い野菜は、あっという間に売り切れてしまうそうだ。

他に、北海道の男爵いもや鮭の産地直送も扱っている。家まで届けてくれるので、わざわざ足を運ばなくてもいい。

○店頭でのASA定食祭り(夏祭り)にも800人ほど集まった。スタッフの手作りの祭りで、クワガタムシ穫りや金魚すくいなどは、子どもにも大人にも大好評である。

映画会の受付 ASA祭り プルタブの回収
普段は配達をしている人が、手作り映画会では受付をしている。 夏の夕方に、金魚すくいなどの祭りをしている。 たくさん集まったプルタブ。車いすに生まれ変わる。

○缶ジュースの蓋についているプルタブを店頭で回収している。プルタブが道路に落ちているのは汚いし、子どもが怪我をするかもしれない。プルタブを集めている業者が、アルミに精製して車いすに加工している。生まれ変わった車いすは、施設に寄付される。

○北山田や南山田の公園の清掃も、月に1回やっている。配達で疲れているだろうと思うが、これも従業員から言い出したことだ。

私が勝手に思い描いていた新聞販売店のイメージが、「港北ニュータウン都筑」を訪問したことで、180度変わってしまった。ここほど地域に密着している企業はないのではないか。「地域の人から支持を得られなければ、これからはやっていけないと思うんです」の店長の言葉に、温かいぬくもりを感じながら、取材を終えた。(2007年10月訪問 HARUKO記)

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