都筑は私学志向?  


我が家の二人の子供たちはそれぞれ高校3年生と1年生。
この地域では、特に上の子と同年代のたくさんのお子さんが、中学受験を目指して塾通いをしていたように記憶している。

理由はさまざまだろうが大半は、「大学受験で苦労させたくないから」「その子に合った学校でのびのび学校生活を過ごしてほしいから」という、親の強い希望があってのことだろう。 

今でも不思議なのは、あの地域でなぜそんなに教育産業が発展し、追い立てられるようにして塾通いする小学生たちが多くなったのか?ということ。

私個人は、下の子の小学校入学を機に隣の区に引っ越したこともあり、色々なタイプの子がいる地元の学校で育ってほしかったので、中学受験はまるで頭になかった。

当時どんな教育的背景があったのか、また、都筑区が誕生して20年になろうとしている今ではどのように変わったのか?
学校教育に携わっている方の声を聞いてみたいと思った。
   
去る8月20日(水) 午後2時、
横浜市教育委員会事務局 北部学校教育事務所 指導主事室 
指導主事  谷口孝雄さんを訪問。

出張から戻られたばかりにもかかわらず、ご自身の経験を通して、私の取り留めもない疑問に答えてくださった。

谷口さんは教師生活20余年。神奈川区・保土ヶ谷区・旭区・戸塚区でそれぞれ小学校高学年の担任をされ、副校長を経験されたのち、今の事務所に異動された。

谷口さんのお話より。 


---中学受験が特にこの地域でどんどん増えていると思われます。

学校の中でも年度によって私立中学受験者数が多かったり少なかったりしており、私立志向一辺倒、というわけではないようです。
横浜市北部地域は都内へも出やすいことが地理的要因としてひとつあります。
保護者の世代に私学出身者が多いことも大きな特徴です。

参考までに、地方から転勤してくる人の中には、公立志向が多い。(公立の滑り止めとして私立を受ける、という考え方が多い)

上の子が受験したから下の子にも受験させたり、選択は、子どもの性別や性格にもよるところが大きい。
この他、中学受験を考えるきっかけになるのは大手塾による「無料学力テスト」です。
駅の近くに大手塾ができると次々と違う塾ができ、3、4年生になる前の「無料学力テスト」をきっかけに、親は塾講師によって「私学がいかに素晴らしいか?」と刷り込まれることが多いようです。
実績を伸ばしたい塾が、戦略として中学受験を煽るところが大きいのでは?
ニュータウンが出来て駅周辺に塾ができるようになると、一時期は中学受験をする子も増えるが、5年、10年と経つうちにだんだん落ち着いていくようです。
   
 

---今の公立中学は実際に荒れているのでしょうか?

学校が荒れてるから私学に通わせたい、という話は実はそれほど多くありません。

公立中学にも良いところが沢山あり、先生も非常に熱心に頑張っているのだけれど、頑張っている部分は伝わりにくい。

たとえば「ある先生が体調不良で休職することになった」ということでもあれば、ちょっとした事件として大きくクローズアップされ、悪い印象を与えてしまうことが多い。

頑張っている公立中学ををもっとアピールしたいのですが。忙しさもあり、なかなかそれが叶わない。ぜひ、もっと地元の中学に足を運んでみてほしい。

 実際にその通りだなと思いました。ちょっとした行事の時、できれば何かの用事のついでに学校をのぞいて見ると、普段の様子がよくわかります。
   
   
---情報に振り回されず、子どもににとって「良い選択」をするためには?

私立を選んだからといって、入学した全ての子に合うかというと、その学校に合わない子は合わない。地元の公立が嫌だからと私立へ進んでも、子ども自身がその学校に魅力を感じなければ、子どもは伸びない。その子次第なんです。

大学進学実績が伸び盛りの学校ほど、入学してから授業についていくのが大変です。でも授業に魅力があれば、多少辛くても生徒は必死についていきます。

中学受験はあくまでも選択肢のひとつです。どちらに進むにしても、子どもが楽しいと思える学校へ進むのが良いのではないでしょうか。

 どちらに進むにしても、自分の居場所がないと、かなり辛そうですね。
 
   
 
最後に、ご自身が男の子三人(うち2人は社会人)のお父さんという立場から、次のような話もしてくださった。
「先生の子はつらいよ」
友達からは当然、先生だからいつでも勉強を教えてもらえて、勉強が出来て当然!と思われてしまう。
でもご自身は、塾をすすめたり、家で勉強を教えたりしたことは一度もないそうだ。

親の立場としては決して教育熱心な方ではなく「なるようになるさ」と育ててこられたとのこと。
でもお子さんたちはお子さんたちなりに地元の学校に馴染み、自分で行きたい高校・大学を目指して
頑張ってこられたそうだ。

あまり教育熱心とは言えない我が家としては、いちばん心強くなるお話だった。

 
終わりに
子供の数がどんどん増えて学校の数が追いつかなかった時期に、煽るように教育産業がこの地域に
進出してきた印象を受けた。そしてこれはどの地域でも起こりうることだ。
中学受験はあくまでもその家庭の教育方針・判断で決めることであり、「どちらを選択するのがいいのか?」
なんていう問いに、正解は無いと思う。
あふれる情報に振り回されてしまいがちだが、私学志向が過熱して、ますます地元の学校離れがすすんで
いくのかと危惧していた自分には、希望が見えたお話だった。

 記事:さいちゃん
 (※ 写真は記事内容とは一切関係ありません)
 
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