「地価の移り変わりを見れば、都筑の20年が見えるかもしれない」。こんな思いで、地価を調べることにしました。

毎年、国土交通省が全国の公示価格(1平方メートル当たりの正常な価格)を公示しています。

都市整備局が、横浜市の分をHPで公表しているので、そのデータを使わせてもらいました。
 

商業地の平均価格と住宅地の平均価格を、表にしてみました。住宅地は20年前から記録にありますが、都筑区誕生時は商業地と言えるものがなかったこともあり、記録にありません。1997年の商業地地価がとても低いのも、本格的な商業地がなかったからでしょう。

住宅地と商業地の両方の記録が残る1997(平成9)年から18年間の移り変わりです。

  1997年  1998年  1999年   2000年  2001年 2002年   2003年  2004年  2005年
商業地平均価格(円/u)  385,000 504,000  501,300  464,000  430,300 412,000  380,000  359,000  346,000
住宅地平均価格(円/u  262,300 260,000  260,400 258,100  253,000  246,300  236,500  227,600  221,800 


   2006年  2007年  2008年  2009年 2010年   2011年  2012年  2013年  2014年
商業地平均価格(円/u) 349,800  393,400  460,400  441,200  425,000   421,800 419,800   431,400 448,800 
住宅地平均価格(円/u)  221,100  242,400  269,200  252,000 238,000  235,700  237,600   233,800 247,400 


住宅地でみると、1997年から2006年まで地価は下がり続けています。いわゆる「バブルの崩壊」の波がここにも押し寄せました。その後3年間は上昇しましたが、2009年から4年間は再び下落。「リーマンショック」の影響が、都筑にまで及んだことがよく分かります。ここ2年間ほどは、また上昇しています。特にこの1年間で

住宅地は3%、商業地は3.9%も上昇しました

上の表をもう少し見やすくするために、折れ線グラフにしてみました。

 
センター北駅に近い「高橋住宅センター」の高橋満さんに、都筑の地価にまつわる話を聞いてきました。

高橋さんが都市銀行を辞めて親の不動産業を手伝いはじめたのが、1996(平成8)年9月。都筑20年と重なります。

「大学の経済学の講義で、不動産は上がるものという土地神話を習ったんです。明治時代から1993年までは、確かに地価は上がり続けました。地価が高いことを前提に経済が成り立っていたんです。僕が不動産の世界に入ったのはバブル崩壊後。不動産が下がり始めた時だったので、『地価は下がるんだ〜』と、新鮮な驚きでしたよ」

「ここ2年ほど上昇しているのは何故でしょう?」

「やっぱりアベノミクスかなあ。人口が減ったら不動産が上がる要素はないんですけどね。でも商業地で3.9%も上がっているのは、横浜では都筑区だけなんですよ。住宅地の3%上昇も、港北区と都筑区だけです。

分析しないとはっきりしたことは言えないのですが、住みやすい街として人気があることは確かですね」

 

都筑区の上昇率はトップだけれど、平均地価はどの程度なのだろうと、横浜18区を比べてみました。

国土交通省が2014(平成26)年3月19日に公示した、もっとも新しいデータです。

商業地の平均地価は、高い順に、西区(1,235,200円)→中区(604,500円)→港北区(574,100円)

→神奈川区(456,700円)→都筑区(448,800円)

住宅地の平均地価は、高い順に、中区(296,600円)→港北区(274,900円)→青葉区(260,400円)

→西区(253,400円)→都筑区(247,400円)

あくまでも平均地価ですが、都筑区は商業地・住宅地とも5位です。両方ともベスト5に入っている区は、西区と中区と港北区と都筑区だけです。最新データを棒グラフにしてみました。このグラフを見ると、都筑区は5位と言っても、突出した西区の商業地とはかけ離れています。

 


西区と中区は言うまでもなく市の中心地。港北区は人気の東横線沿線。都筑はなぜ?

これについても、高橋住宅センターの高橋さんに聞いてみました。

「ニュータウン事業で、新しく開発した街ですからね。広い自動車道もあるけれど、車が通らない緑道もあります。

モダンな街並みに緑が溶け込んでいます。これが人気なのかもしれません」

 

「都筑は今のところ5位と人気がありますが、問題点もありそうですね」と高橋さんに聞いてみた。

「そうなんですよ。ここ20年を見ていると、東急や阪急はデパートとしては撤退も同然、高級店も撤退しています

商業ビルはどんどん建ちますが、集客できてない店もたくさんあります。ビルごと撤退するようなことになれば大ごとです」

「私からみると、まだまだ成熟した街になってないような気がするのですが、不動産屋の立場ではどう思いますか」

「その通りです!大人が楽しめるような横丁なども欲しいですね。たとえば渋谷や新宿にあるような少しゴチャゴチャした横丁があってこそ、魅力的な街になると思うんですよ」

「もうひとつ聞きたいのですが、どんどんマンションが建ちますよね。駅から少し離れたマンションなども満室なんでしょうか」

「全国どこも過剰状態です。地主は、相続税対策でマンションを建てることを、勧められるわけです。マンション建築で儲かるのは金融機関とディペロッパーだけで、オーナーは大変だと思います。でも都筑区の空室率は、2割弱。

東京もこのぐらいで、全国レベルで言えば、良い方なんです」

地価の動向を調べたことで、さまざまなことが見えてきた。長年都筑区に住んでいて、これからも住み続けようと思っている私は、成熟した街、年寄も住みやすい街に発展することを、強く願っている。

                       (2014年9月10月 取材  HARUKO記)

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